弓葉ゆみ(旧:半径100m)

棚からぼたもちと粒あんが好き。 すべてフィクション。不定期投稿。 コメ返やフォロバ、遅めです。 noteを黙って留守にするとき、多めです。 フォローもアンフォローも、どうぞお気づかいなく。

弓葉ゆみ(旧:半径100m)

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マガジン

  • 11〜30分の物語

    11〜30分で読めるオリジナル短編小説を収録。 文体や読後感は、それぞれ違います。 1分600文字くらいで読めるかな、と適当計算した時間です。

  • 1〜5分の物語

    1〜5分で読めるオリジナル短編小説を収録。 文体や読後感は、それぞれ違います。 1分で600文字くらい読めるかな、と適当に計算した時間です。

  • 6〜10分の物語

    6〜10分で読めるオリジナル短編小説を収録。 文体や読後感は、それぞれ違います。 1分600文字くらいで読めるかな、と適当に計算した時間です。

  • 創作大賞2024 応募作品&いただいた感想文

    note 創作大賞に応募した作品『エロを小さじ1』全十一話のマガジンです。 そして、いただいた感想文、紹介してくださった記事です。 ありがとうございます!

  • 創作大賞2024 応募作品&いただいた感想文

    掌編集です。全五話。一話完結なので、どこからでもお読みいただけます。読んでください! ゆるいファンタジーです。異世界旅行も生まれ変わりもありません。 いただいた感想文も収録。ありがとうございます。

最近の記事

きりのたまご

 霧の朝、私は卵を買いに車を走らせた。   数メートル先も見えないほどの濃霧だから、ライトをつけ、ときおりクラクションを鳴らしながら、海沿いの道を進んだ。海からも汽笛が頻繁に聞こえる。  海沿いにある直売所の駐車場はすでに混んでいた。この店では新鮮な野菜や果物だけでなく、最近価格が高騰している貴重な卵が手に入るから、その情報を手に入れた者たちがひっきりなしに訪れる。  私は車を降りると、すぐに卵売り場に向かった。生産者カップルの写真が貼られている棚には、透明なパックにひとつだ

    • ヘビイチゴ

      「ヘビイチゴって、知ってます?」  金曜日午後10時のバー。カウンター席で隣に座っていた女に、突然訊かれた。  週に三日はこの店に来ているが、見たことのない女だった。もし会ったことがあれば、決して忘れるはずのないような人目を引く顔をしている。左右の目がアンバランスで唇が厚い、どこか危うい雰囲気の顔をした女だった。  女は僕の右隣に座り、呆けたような顔でカウンター正面に並んでいる酒のボトルを眺めながら、カクテルを飲んでいた。ロンググラスに入った赤いカクテル。  そして、ボトルの

      • オー! マイ オバQ !

         頭が割れるように痛いから、脳神経外科に初めて行った。  痛いのはいつから? 過去の頭痛の頻度は? 現在服用している薬は?  沢山の質問に応えたあと、MRI検査をした。  検査結果の説明を受けるために、私は医師の前に再び座らされた。四十歳くらいの男性医師は、机の上のPC画面を見つめている。 「これが、あなたの頭、断面ね」  医師は、ボールペンの先で、割れたスイカみたいなものが写っているMRI画像を指す。  そして、すぐに眉をひそめた。 「あっ、これは」  私の頭の断面写真に

        • アオハルは金色

           金色に輝く派手な髪の女性に、突然、声をかけられた。  「あんた、誰、待ってるの?」    私はそのとき、駅前広場の柵にもたれて、駅から出てくる人々を見つめていた。 「高校生だよね? 彼氏、待ってるの?」  私が黙っていても、金髪さんはお構いなしに話し続ける。 「今日、寒いのにさ、あんた、かれこれ二時間くらい、ここで銅像みたいに動かないよね。彼氏なのか友達なのか知らないけどさ、もう来ないよ、あきらめな」  修斗くんはもう来ないかも……私だって、そう思っていた。でも、それを知ら

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        • 11〜30分の物語
          1本
        • 1〜5分の物語
          21本
        • 6〜10分の物語
          8本
        • 創作大賞2024 応募作品&いただいた感想文
          22本
        • 創作大賞2024 応募作品&いただいた感想文
          10本
        • 童話と絵本
          7本

        記事

          ワンダフル ワールド

           僕は、紙人形だった。  小学二年生の誠くんが、スーパーのチラシで僕を作った。だから、僕のお腹部分には、豚肉の写真と100g190円と書かれた文字がある。はっきり言ってダサい。そう文句を言ったら、誠くんは驚いた顔をして「えっ、スーパーくん、キミは僕のお気に入りだよ」と応えた。  スーパーマーケットのチラシで作ったから、スーパーくん、それが僕の名前らしい。  手先が器用な誠くんは、ケント紙、ティッシュ、半紙などからも人形を作っていて、どの人形も個性的だった。多様な魅力があった。

          ワンダフル ワールド

          銃とナイフ

           急に読みたくなった本を、自宅の本棚から取り出した。中村文則さんの『銃』。何年か前に一度だけ読んだ小説。  雨の河原で銃を拾った男が、その美しさに魅せられ破綻への道を歩いていく。その心理描写をリアルに感じて、息が詰まるような苦しさを感じながらも夢中でページをめくったのを覚えている。  ……と、ここまで書いて、僕はパソコンの横に置いてある物に目をやった。  サバイバルナイフ。昨日の夜、正確には深夜十二時頃に拾ったナイフ。  あの小説と同じように河原で見つけた。小説と違って、周

          ズッキーニとキュウリ

           風鈴と風が戯れあっている。ちりんちりんと、笑っている。その音を聞きながら、私は台所で野菜を洗っている。 「ズッキーニとキュウリって、似てるね」  突然、背後から文也の声が聞こえて、私はズッキーニをシンクの中に落としてしまった。振り返って、声の主を見た。 「あぁ、びっくりした。おかえりなさい」  蛇口から勢いよく流れる水が、驚かされた私の心臓みたいに、シンクの中で飛び跳ねる。 「似てるけど、ズッキーニはウリ科でカボチャの仲間よ」  文也は「知ってるよ」と笑って、私の横に立ち、

          ズッキーニとキュウリ

          創作大賞感想キャッチコピー。その②

          創作大賞応募作品の中から、読んだ作品のキャッチコピー&三行感想文?を書きました。 応募期間後半は、フォローの有無関係なく読みました。noteには素晴らしい作品が本当に沢山あるのですね。 そのなかから、私好みを数作チョイスしました。 その①はこちら あの頃を思い出す。爽やかで温かい青春物語。 友情、家庭問題、受験、そして恋。全ての登場人物がいきいきとしていて、特にお父さんが最高です。作中小説も素晴らしい。爽やかで泣けます。 恋心はバイクと走る。中年男の切ない物語。 初読みの

          創作大賞感想キャッチコピー。その②

          読んでくださり、ありがとうございました。

          何の準備もしていなかった『創作大賞2024』 どうしよう? 初参加するべきか? 悩んだ末…… ① 数年前に他の投稿サイトで連載して、途中で止めてしまった『エロを小さじ1』をこの機会に書き直して完結しよう!  ② 以前noteに投稿した『球体の動物園』に新作一話を追加して投稿しよう! ……と決めて、急遽書き始めました。 参加して良かったと思っています。とても楽しい時間を過ごすことができました。二つの目標も達成できて、それだけで満足しています。 ただ、今後また創作大賞に参加する場

          読んでくださり、ありがとうございました。

          創作大賞感想キャッチコピー。その①

          創作大賞応募作品の中から、読んだ作品のキャッチコピー&三行感想文?を書きました。 あぁ、こんなに短いのに、時間だけはかかりました。そして感想文?下手です。 読んだのにまだ書けてない作品、読みかけの作品、読みたい作品もあるので、第二弾も予定しています。 (読了順) 恋愛、家族愛、フラ愛。行間に愛が踊る。 映像化に最適な作品です。この物語に出てくる男性たちが好きです。フラダンスに詳しくなくても、映像が浮かび、踊ってみたくなります。 つかみどころのない男が人の心をつかむ。

          創作大賞感想キャッチコピー。その①

          掌編集『球体の動物園』 いそげスローロリス

          「あぁ、あんた見てたらイライラする。いいわよ、私がする」  莉奈ちゃんはそう言って、私の手からカップ麺の空の容器を奪い取った。  腹が立ったから、私は莉奈ちゃんを睨みつけて言い返した。 「食べたらすぐに片付けてくださいって、言いましたよね。いつまでもテーブルの上にあるカップ麺の容器を見てると、私の方がイライラするんです」 「あんたって、動くのはのろいくせに、怒ったら早口になるんだね」  莉奈ちゃんは私を睨み返し、怖い顔をしたまま、カップ麺の容器をゴミ箱に投げ入れようとする。

          掌編集『球体の動物園』 いそげスローロリス

          掌編集『球体の動物園』 たぬきおやじ

           近所の体育館で行われる『いきいき体操教室』の申し込み書に必要事項を記入していた節子さんの手が止まった。年齢という欄で、右手にボールペンを持ったまま静止している。  あら、私は、いくつになったんだっけ?   節子さんは天井を見上げて眉を寄せた。天井の木目は何も教えてくれない。  八十を超えたの覚えているけど、何歳超えたんだっけ?   節子さんはしばらく考えて、八十四と書き込んだ。  たぶん八十四か五だ。一歳くらい間違えても怒られはしないだろう。  そう決めつけてから、いつから

          掌編集『球体の動物園』 たぬきおやじ

          掌編集『球体の動物園』 エミューの笑み

          「変なヤツが、うちのビルの屋上にいるみたいなの。ちょっと見に行ってくれるかな?」  社長から電話があったのは、俺が明日お客さまに渡す賃貸借契約書をちょうど書き終えて帰ろうとしていたときだった。  先に事務所を出た社長は、たぶんこのビルの向いにあるバーの窓際に座っている。いつものようにジントニックを飲みながら窓の外を見上げ、変なヤツに気づいたのだろう。 「了解しました。見てきます」 「大丈夫? 無理だったり、危なかったりしたら、こっちの携帯に電話して」  社長の声色からすると、

          掌編集『球体の動物園』 エミューの笑み

          掌編集『球体の動物園』 かばうらら

           今日、かばが来る。かばが来る。かばと会える。  目が覚めるとすぐにそう呪文のように唱えて、私はカーテンを開けました。眩しい朝の光が幸先良く、と言いたいところですが、外は雨。雨が無言で降っていました。残念に思い、私は一瞬目を閉じましたが、瞼の裏に浮かんだかばの顔は笑っていました。  かばには、昨日、確認の電話をしました。 「あの、明日ですよね。何か準備して欲しい物はありますか」 「そうですね、湯船いっぱいに水を用意していただけたら嬉しいです」  かばの珍しくはずんでいる声を聞

          掌編集『球体の動物園』 かばうらら

          掌編集『球体の動物園』 ゴリラVSイメージ

          「おい、ねぇちゃん、俺たちと遊ぼうぜ」  今どき珍しい声の掛け方をされたとき、私の頭の中を巡ったのは『ひとり暮らしの女性が、近所のコンビニでお弁当をひとつだけ買うのは危険です』という、昔どこかで読んだ忠告文だった。  今のこの状況のように、コンビニから跡をつけられたりするらしい。 「ねぇちゃん、可愛い顔してるな。仕事帰り? カラオケボックスでも行かない?」 「結構です」 「ふん、カラオケじゃなくてホテルでもいいぜ」  男二人は、私の左右に立った。コンビニの袋をぶら下げてる私の

          掌編集『球体の動物園』 ゴリラVSイメージ

          エロを小さじ1 《最終話》

          《最終話》そしてハッピーエンド? 「和牛のたたき」 「おこぜの唐揚げ」  池上貴明が予約してくれた小料理屋の、木の温もりのある個室に座ると、貴明と春香はメニューを覗き込み、次々と料理を選んだ。 「おくらの天ぷら」 「おっ、それ、僕も食べたかったんだ。あとは季節の野菜の炊き合わせ」  食の好みが似ている。そんな男と料理を選んでいるだけで、春香の心は踊った。  食べ物の趣味が合う人と向かい合って座る、食べる、飲む、話す、笑う。食べ物と二人の間の空気が絡まって、喉を伝い内臓に到達

          エロを小さじ1 《最終話》