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今日のコーヒー、明日のコーヒー

 コーヒーを飲みたい、と思う。
 最近はいつも、そう思っている。

 我が家の冷蔵庫には、サーバーになみなみ淹れたコーヒーが冷やされている。
 これがいつもなみなみ、満タンだったらいいのだけれどそうもいかない。
 残りが少なくなったらボトルに移送されて、次のコーヒーを淹れる。また冷やす。その繰り返し。
 あたたかいコーヒーそのまま冷蔵庫に入れてるので、冷えるまではしばらくかかる。アイスコーヒーには、仕込みが必要なのだ。
 明日のわたしが、アイスコーヒーを楽しむため。今日も豆を挽く。

 というのが毎日、あるいは思い立ったときにでしきればいいのだけれど、たいていはうまくいかない。
 コーヒーを愛しているのに、こんなにも面倒くさい。
 好きなのに、いつでも面倒じゃないことって、眠ることくらいではなかろうか。散歩も、本を読むことも、ゲームも、ついつい面倒に思ってしまう。コーヒーももちろん、そのひとつ。

 コーヒーを飲みたい。アイスコーヒー。
 でも、いま飲んじゃったら明日の分がなくなる。
 明日は休み。寝起きの身体にそそぐコーヒーの幸福は、何事にも代え難い。
 というのも本音なのだけれど例えば明日の朝
 ねぼけまなこで、コーヒー豆をひく。20グラム。いつもの半分の量で、なみなみじゃなくて、わたしが今から飲む、特別なドリップコーヒーを淹れる。時間をはかって、美味しいコーヒーに出会う。
 その想像は、アイスコーヒーにも負けず劣らずの幸福だった。

 明日のわたしも勝手にコーヒーを飲んで、しあわせになるから。今日のわたしだって、我慢しなくていい。
 さあ、コーヒーを飲もう。
 昨日のわたしが淹れてくれたアイスコーヒーを。


▼おいしいコーヒーの淹れ方


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松永ねる
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