シーツを洗う
お恥ずかしい話だが、大阪に出てきてから、先日初めてシーツを洗った。
べつに洗いたくなかったわけではないのだ。どこかで洗わなきゃなあとはずっと思っていた。
しかし自室の洗濯ものを干すところは狭く、シーツを干せそうなスペースがない。
他の入所者さんたちはどうしているのだろうかと、去年の夏ぐらいからずっと気になってはいた。しかしめんどくさくてなかなか聞けないでいるまま、日々が流れていってしまった。
そしてゴールデンウィークの後半が始まる直前、別の用事で自室を訪ねてきた担当のケースワーカーさんに、「シーツ洗いたかったら持ってきてくれればこっちで洗うよ」と言われた。
よほど汚れていたのだろう。そりゃあ1年も洗っていないのだからそうなるよなあ。
なーんだ、職員さんに預ければ洗ってもらえたのかー。もっと早く聞いてみればよかった。
GW明けの朝、定期通院に出かける前に急いでシーツをはずした。
そんな中掛け布団のシーツをはずしていてビックリした。
それまで掛け布団のシーツといえば、隅っこがひもで結ばれているのが多いと思っていた。しかしそのシーツはボタンで止めるタイプだったことを、この時初めて知った。
20年と少し前、地元の盲学校の小学部6年生から、自立のためにと親や先生たちから半ば強制的に寄宿舎に入らされてからというもの、部屋に掃除機をかけることや、トイレ掃除以上に嫌いだったのが、シーツを洗うことだった。
もともとひもを結ぶのが苦手だったので、シーツをはずす時も、結んである四隅のひもを解くのも、シーツをつける時に解いたひもを結びなおすのも、なかなかうまくできなかった。
寄宿舎の先生はただ「自分でやりなさい」と言うだけで、けっして手伝ってはくれなかった(学校なのでそれが当然なのかもしれないが)。
だからシーツをつけるだけで1時間以上かかったこともあった。たったそれだけのことでも、子供ながらに本当にきつかった。
そんなこともあって、シーツを洗うことがよけい嫌いになっていった。
その後大人になってからは、どうせ自分しか使わないのだからと、シーツのひもを結ぶことをしなくなった。
ただそうすると、使っているうちにだんだん布団の中でシーツがずれてしまうのが少し気になったけれど、まあそれも仕方ないかと諦めていた。
それが今では上の二つの隅のボタンをパチンと止めるだけで良いのだ。
シーツを洗うこと一つとっても、世の中楽な時代になったなあと思う。