雨の中の外出
昨日は朝から1日中雨が降っていたが、午前中スーパーに買い物に行ってきた。例によって、午後からの調理のプログラムで使う材料の買い出しのためである。
施設から歩いて2.3分ほどの銭湯に行く時以外で、雨の日に単独で片道20分ほどの長距離の外出をするのは、大阪に出てきてからはたぶん初めてだと思う。
大阪にきてから雨の日の外出には傘ではなくかっぱを着るようになった。右手に白杖、左手に傘だと両手がふさがってしまい不便だからというのもあるが、この辺の道は狭いので、かっぱを着てフードを被る方がうごきやすいからだ。
「雨の中お出かけですか?」
施設の玄関に降りると、これから歩行訓練に出る利用者のIさんの歩行訓練士さんに声をかけられた。
「はい、午後からの調理の買い物に行ってきます」
「えー、こんな雨の中行くの?」
私の答えに対して、Iさんが驚いたように聞いてきた。
「だって電子レンジで揚げ出し豆腐を作るのに豆腐がなかったら作れないから」
そう答えて私はかっぱのフードを被って外に出た。
雨の日の道路は、傘やかっぱのフードを被ったりするので耳が隠れる影響もあるのか、周りの音の聞こえ方がいつもと違って聞こえる。あとこれは個人的な感覚かもしれないが、雨の日は車の音がいつもよりも大きく聞こえるのも怖い。だから雨の日は歩きなれた道でも、歩く時はかなり緊張する。
特に交差点を渡るのが、晴れた日でも失敗することがあるぐらい、真っすぐの方向を取るのが難しいので、雨の日はよけいにドキドキする。
それでも無事に買い物もできて、行きは何とかだいじょうぶだった。
しかし帰る途中、コンビニを通り過ぎた後の交差点を渡った時、渡り終えた時の足の感触が違うように感じて一瞬不安になった。
でも落ち着いて周りの音を聞いてみると、雨の音に交じって、いつも交差点の真ん中にあるマンホールの水が流れる音が目の前で聞こえているのに気づいた。どうやら渡り始めるタイミングが少し早かったようだ。
「羽田さーん」
帰りの銭湯の手前の交差点を渡り終えた時、さきほど玄関で会ったIさんの歩行訓練士さんに再び声をかけられた。へんな渡り方をしてしまったのだろうかと不安に思っていると、慌てた様子で駆け寄ってきてこう言われた。
「あの、そこにワンちゃんの落とし物があるから手引きしますね。踏むの嫌やろ?」
いやあ、とても助かった。ワンちゃんの落とし物は音がしないので、一人だったら確実に踏んでいただろう。
全盲者にとってそういった類の物は、車や自転車よりもある意味危険かもしれない。そういう意味でも、飼い主さんはワンちゃんの落とし物はちゃんと持ち帰ってほしいものである。
そんなわけで、この日もどうにか帰ってくることができた。
雨の中の外出も今後増えてくると思うので、これから少しずつ慣れていかなければ。