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見上げた空は青くて

川のせせらぎの聞こえる農村を訪れた。

自然のざわめきの中空気は澄んでいて見上げると一筋の飛行機雲。
思わず口もとからメロディが溢れ出す。

  ♪見上げた空はあおくて

あれ?この続きなんだっけ。

飛行機雲が伸びていく様子を見ながら、畑の間をあるく。
見上げた空はあおくて、、

あ、そうだ。


  ♪真っ直ぐ伸びた放物線
  ♪歓声の渦の中消えてくよ


たしか、私が高校生の頃の夏の甲子園のテーマソングだ。

と、気がついた瞬間に球場の風景がぶわっと蘇る。

バッターボックスにたつ仲間、汗臭いベンチ、砂に汚れたスコアにペンを走らせる。

金属バットが白球を捉える、重量感のあるおと。伸びる打球、スタンドの歓声。「ナイスヒット!」赤ペンに持ち替えてヒットの斜線。士気溢れるベンチ。次のバッターボックスにむかう仲間の背中から伝わる緊張。興奮。胸の高鳴り、祈り。

夏だからだろうか。

一つ一つが鮮明の蘇る。


ここは球場では無い、静かな農村。仲間はいない。わたしは1人。
だけど、過去の思い出に引き込まれるのは、きっと、音楽に魔力があるからだろう。
あの頃飽きもせずに聞いた曲を、10年後の青空に歌う。

  見上げた空は青くて
  真っ直ぐ伸びた放物線
  歓声の渦の中消えていくよ

よく考えたら、真っ直ぐ伸びた放物線って矛盾だよな。真っ直ぐは直線だし放物線は曲線だから。

ふとそんなことをかんがえる。これをかつての仲間たちにはなしたら、どんな返答が返ってくるのか、なんだかそこまでイメージできてしまう。

ふふふ、と笑ってしまった。

今年も夏は、どこまでも夏だ。

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