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「寝不足でお越しください」
あなたは「寝不足でお越しください」という文言を見たことがあるだろうか。
私は先週初めて見た。
病院で渡された、検査の注意事項の用紙。
1枚目に朝から絶食の内容が記載されており、めくった2枚目の紙の1行目がこの文言であった。
検査を受けるのは私ではなく次男。
低身長症の検査の一環で、MRIをとることになったのだ。
私はMRIをとったことがないのだけど、なんでも閉ざされた空間で大きな音の出る機械のなかに入るため、大人でも恐怖を抱く人がいるらしい。
そのため、おおよそ10歳くらいまでの子どもは眠って検査を行う。
ただし、眠るために麻酔ほど強いものは使わず、少しの鎮静剤とあとは自力で眠る必要があるそう。
決められた時間までに眠らないと、検査はできず、後日また予約を取らなくてはならない。
確実に眠り、検査を実行するための「寝不足でお越しください」なのだ。
空腹で寝不足という、人間の三大欲求のうち2つが満たされない状態で検査を受けないといけない。
3歳の次男に性欲があるとは思えないため、実質生きていくための全ての欲求が満たされていない状態である。
いと哀れなり。
哀れだが、哀れんでばかりはいられない。
かたや次男は絶食、かたや長男は保育園という状況で、朝から長男は姉に連れ出してもらいコメダでモーニングをしている。
姉には朝食代と保育料を渡してある。
つまり私はこの状況に課金しているのだ。
失敗は許されない。
前日の夜は24時まで起こしておいた。
普段遅くとも22時には寝かせているから、かなりの夜更かし。
朝は5時に起こした。
私ならこの時間に起こされたらキレ散らかす。安眠を妨げるものは何人たりとも許さない。
しかし朝5時から子どもたちにキレ散らかされたくはないため、ここは潔く文明の利器ネットフリックスに頼る。
ありがとうパウパト。
愛してるパウパト。
とにかくこれで寝不足の3歳を作り上げることには成功した。
ここから追い打ちをかけるため、寒空の下朝9時から公園に行き遊び、そのあと10:30の受診まで散歩をする。
寝不足で、空腹で、歩かされる。
もはや拷問の類である。
しかし全ては検査のため。
待合室でアンパンマンのテレビを見ながらうとうとする次男に声をかける。
寝ちゃダメだ!
さながら雪山で遭難した登山家だ。人目を憚ることもしない。
できることは全てやった。
いざ、鎮静剤をのみ、薄暗い部屋に通される。
ベッドに横にさせ、少し離れたところで見守っていると…
寝た!
25分という好タイムで寝た!!
母の完全なる勝利である。何と戦っていたのかわからないが。
安らかに眠る次男の寝顔をみて、急に私も眠くなってきた。
そういえば私も寝不足絶食お散歩コースだった。
いやいやこれから検査だ。しっかりせねばと自分を奮い立たせる。
私はこの子の唯一の親なのだから。
病室、次男の寝顔に、何故だか父親の不在を強く意識させられた。
寝不足の母は検査室に向かう眠った子を見送る。
ほんの少しだけ、心細いのは、きっと空腹のせい。