
社内ベンチャーで成功しても退職した理由、起業という決断
私は、新卒で入社した上場ITベンチャー企業で、新規事業部門に配属され、いわゆる社内ベンチャーを経験しました。
試行錯誤の末に立ち上げたWebサービスは順調に成長し、事業責任者も務めました。子会社化の話も進み、「子会社社長」というポジションまで用意されるなど、順風満帆なキャリアが目の前に広がっていました。
しかし、私は計画通り、入社して4年でその会社を辞め、独立を選びました。今回は、その理由と決断の背景についてお話しします。
辞めた理由──成功の中で感じた限界
社内ベンチャーで成功したにもかかわらず、なぜ私は辞める決断をしたのか。その理由は次のようなものでした。
報酬の限界
新規事業が順調に成長し、数字的な成果を残しても、給与や賞与にはほとんど反映されませんでした。
評価の不満
評価の際には、成果よりも「人間性」や「できていない部分」が強調されることが多く、努力や結果が正当に認められていないように感じました。
部署内の難しさ
最年少の責任者だった私は、メンバーに軽く見られることもあり、部署内の雰囲気は良いとは言えませんでした。胃が痛むような日々もありましたが、メンバーが結果にコミットする姿勢だけは頼もしいものでした。
飽きの到来
もともと「4~5年で独立する」と決めていたこともあり、事業が成長軌道に乗った段階で、正直言うと飽きを感じ始めていました。(飽きっぽいんです…)
ゼロイチの魅力に気付いた
私は、事業をゼロから作ることに楽しさを感じるタイプです。成長が安定期に入ると、新たな挑戦を求める気持ちが強くなり、「すべて自分の責任で事業を作りたい」という思いが芽生えました。
社内ベンチャーの「ぬるさ」──成功と失敗の狭間
社内ベンチャーは、安全な環境で新規事業にチャレンジできるというメリットがあります。私がいた会社では、失敗しても「いいチャレンジだったね」と評価され、当然、給与が減ることもありません。
一方で、成功しても「いいチャレンジだったね」と褒められるだけで、報酬に大きな差はありませんでした。
これは会社側の方針としては合理的かもしれません。新規事業を通じて社員に経営ノウハウを学ばせ、将来的に基幹事業を支えるリーダーに育てる──人材育成の一環としての社内ベンチャーは、失敗を恐れず挑戦できる文化を作る点では素晴らしい制度だと思います。
しかし、独立心が強い私にとっては、この「失敗しても責任を取らなくていい」「成功しても報酬に反映されない」という環境は、どこか物足りなく感じてしまいました。
特に、成功した時に得られるベネフィットが「称賛」や「経験」だけでは、この会社で新規事業をやり続ける意欲が湧きにくかったのです。
新規事業に必要な「本気の評価制度」
新規事業の目的が「人材育成」なのか、「会社の柱を作ること」なのかによって、必要な評価制度や求められる人材は変わると感じています。
私のいた会社では、挑戦そのものを称賛する文化はありましたが、事業を成功に導くための厳しさや報酬の仕組みは薄かったように思います。
例えば、起業の場合は、失敗も成功もすべて自分に返ってきます。しかし、社内ベンチャーでは失敗の責任を取らなくてもよい一方、成功した時のリターンも制限されています。
この「責任と報酬のバランス」が新規事業に携わる人々のモチベーションを大きく左右するのではないでしょうか。
独立の決断──温室を飛び出すとき
評価面談ではよく上司にこう尋ねていました。
「なぜ、結果を残しているのに報酬は上がらないのですか?」
その答えは、「おまえは会社員であって経営者ではない」でした。
一方で、新規事業に関しては「経営者マインドで働け」と言われる。この矛盾を感じる中で、「それなら自分が真の経営者になろう」と決断することは、私にとっては自然な流れでした。
周囲からは「上場企業の子会社社長を務めれば、転職にも有利」などの声もありましたが、そもそも私に「転職」という選択肢はありませんでした。私が目指すのは、失敗しても成功しても、すべてが自分に返ってくる起業の世界です。
社内ベンチャーという温室で育った私が、いよいよ温室を飛び出し、大きな海に小さな船で漕ぎ出す時が来たのです。
次回予告
次回のnoteでは、起業してからのリアルな話をフェーズごとに詳しくお伝えします。新規事業で学んだことをどう活かし、どのように事業を立ち上げていったのか。その道のりをお楽しみに!