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2024/11/27 東京を走る人の数は思っているよりも多い
お久しぶりです。二ヶ月ぶりのエッセイです。
ありがたいことに前回のゆるゆるエッセイ談に対して多少反応があり、これは面白いぞというイチオシのエッセイを教えてくれる人たちがちょこちょこといた。そうして朝井リョウ(またも!)やらピース又吉やらのエッセイを読んでいるうちに、再び書きモチベが首をもたげてきたこともあって、ここ二ヶ月間の話でもと思い立った。
9月24日(火)にランニングを始めた。NikeRunClubに記録されているところによれば、3.05kmを20分55秒、1kmあたり6分51秒で9月24日の僕は走ったとのことである(ペース遅すぎだろという反応はやめてほしい、やはりちょっと気にするので)。それ以来、約二ヶ月で大体二、三日に一回のペースでランニング、もといジョギングを続け、距離でいえばトータルでフルマラソンを二回とちょっと走ったことになる。何かにつけて、低い方低い方へと流れて自分を甘やかしてしまう性格な上に、日常的に走るという行為をするのは中学校のバスケ部以来であることを考えると、これは結構な快挙である。
第一、僕は走るのが全くもって好きではなく、何を好き好んで空気の濁った東京で坂を上ったり、下ったりして、ゼエゼエ息を切らさなきゃいけないのかと思っていたし、今でもたまに思うことがある。走ることの何が嫌かと言えばやはり、走っているうちに息が浅く早くなってきて、肺が締め付けられて、息をこれでもかと吸い込もうとするけれども足りない、あの苦しさである。遅刻するか間に合うかギリギリの電車めがけて、改札を潜り、階段をダッシュで駆け上って、結局電車を目の前で逃してしまう時の息切れと膝に手をつく他ない体勢を思い出してほしい。最悪だ。
それに僕は煙草を吸うのだが、煙草を吸うこととランニングの相性はすこぶる悪い、というか組み合わせとして意味が分からない。心肺を強くさせたいのか衰弱させたいのか、長生きしたいのか早く死にたいのか、せめてどちらかに統一してくれと、ランニングを終えて煙草を吸っている時に体中の細胞たちが訴えかけてくるような気がしている。
二十三年と半年分の憎悪をランニングにぶつけたところで、なんでこのような走り嫌いな人間がランニングを始めたのかについてとランニングに対する二ヶ月分の歪な愛を少し語りたい。お付き合いください。
経緯①:柴田聡子
9月の半ば頃だったと思う。前回の文章でも出てきた、柴田聡子のエッセイ集『きれぎれのダイアリー 2017-2023』の中で、柴田聡子が近頃ランニングを始めたという話を書いていた。そして、走るのは肉体的にも精神的にもいいと言っている。あのひょろっと、なよっとしたイメージの、眼鏡をかけた柴田聡子が、である。柴田聡子は運動なんてしない、花を買うか歌を歌うか、眼鏡を拭くかしかしていないだろうと思っていた僕にとって、ちょっとした衝撃だった。それ以来、ランニングも案外と良いものなのかもしれないと心に留めるようになった。
こうして文字に起こすと自分のあまりの単純さにビックリするのだが、僕は割と簡単に人の影響を受けるタイプの人間なので、信頼できる人が良いと言っているものはなるべく取り入れてもいいなと思って生きているのである。ただこの時点ではまだランニングは始めていない。
ちなみに柴田聡子も矢沢永吉が毎日ランニングをしているという話を聞いて、「永ちゃんが走っているのなら自分も走らないわけにはいかない」と思い、ランニングを始めたと語っている。似ている。
経緯②:ムーミン
9月21日から23日にかけて、三連休を使って高校の友人たちと旅行をしていた。夜になるとお酒を飲んで、服を脱いで、どんちゃん踊り騒ぐような友人たちである。その日もひとしきり盛り上がり疲れ、ダラダラと過ごしていた時、僕のパンツ姿に対してある友人が「お前の体なんか変だな、ムーミンみたい」と言い放ったのである。ムーミンである。あのフィンランド生まれの妖精の。確かに僕のお腹の状態はというと、横っ腹に肉が付き、逆くびれみたいなフォルムでツルッとしているため、ムーミン要素がないとは言い切れなかった。そのため何言ってんだと怒ることもできず、自分のお腹を見てそうかなーと言うしかなかった。友人たちは爆笑していた。
ただ考えて欲しいのが、ムーミンはムーミンだからこそあのフォルムが可愛らしいのであって、ムーミン型の23歳男性は可愛いで済まない、見るに耐えないという紛れもない事実である。5月半ばにメキシコ旅行から帰ってきて以降、ちょっとずつ増えていく体重と前に出てくるお腹に対して見て見ぬ振りをしてきた僕だが、この時に明確にフォルム改善を決意した。ちょうどこの旅行の最中に、ある女の子からタイプじゃないと人伝てに言われたことも、決意を固める一因となった。
翌日温泉に浸かりながら、僕の体型改善を目指す作戦本部が立ち上げられた。友人たちのやれジムに行くのがいい、やれ筋トレだ、糖質制限だ、そもそも飲みに行く回数を減らせといった、今後の僕の生活指針に関する助言、要するにダイエットアドバイスを、僕は湯船の中でお腹の肉をつまみながら聞いていた。正直どれもあまり気乗りしなかったのだが、ふと柴田聡子のランニングの話を思い出し、ランニングならやってもいいかもしれないなと思った。そしてその場でランニングを習慣にすることを宣言し、翌日から僕のランニングライフ a.k.a. ムーミン脱却計画が始動した。
本当はこの勢いでランニングを始めた後の話もするつもりだったのだが、当初の予想に反して長くなってしまったので、ここらで一度中座することにする。続きはムーミン脱却計画2で。近々書く予定なのでしばしお待ちを。
スプライトの缶は内側から燃える。(2024/9/24)キタウラシュンタロウ
書いてるときのBGM:『カーニバルの夢』ハンバートハンバート