「子供を殺してくださいという親たち」
ピッコマを漂っていたら、この漫画を見つけた。
タイトルを見たときに、かなり興奮した。
なぜならわたしはこの漫画の原作を数年前に読んでおり、今でも非常に心に残っている本のひとつだったからだ。
この本を読んだのはいつだっただろうか。書店で見かけて立ち読みをし、すぐに購入をした。
タイトルで分かるとおり、内容はかなりエグい。長期ひきこもりで40代50代になった子供の話であったり、ひどい家庭内暴力、親を奴隷扱いし、金をむしりとる子供の話など(子供といってもすでに30代~50代だったりする)、
家庭内で長期化された親子の問題を、著者である押川剛さんが家に訪問し自身で経営されている『トキワ精神保健事務所』に連れて行くことで子供の社会復帰をめざす、というノンフィクションの本である。
内容も非常に面白く、読んで号泣した覚えがある。
押川さんの熱い思いに感動したこともあるし、内容の重さと家庭問題の根深さに、「こんなにかなしい話があるのか」というやるせなさを感じて心を揺さぶられたのを記憶している。
本の方は正直重すぎて読めないという方もいると思うが、漫画の方ならばかなり読みやすいので、ぜひ読んでみてほしい。
原作もさることながら、この漫画の作画の方もすばらしい。とても見やすい作画で、描き方も原作にリスペクトを感じる。
調べてみるとこちらで1話を全部読めるみたいなので、この1話でいいから見てみてほしい。
この1話で主人公である押川さんがいう台詞が心に突き刺さる。
「『子供を殺してくれませんか……』『子供が死んでくれたら……』『子供が事故にでも遭ってくれたら……』
これらはすべて俺のところへ相談やってきた親たちの言葉だ。
しかしそんな親たちはいまの自分たちの姿こそ長年の積み重ねの結果であることを忘れている。
表面的な事象にとらわれ、ぬくもりや人間味に欠けた育て方をすれれば問題行動として必ず跳ね返ってくる。
それは子供たちの心の叫びだ。親たちへの復讐だ。」
わたしは長期ひきこもりや家庭内暴力やアルコール依存症をはじめさまざまな重度の依存症、精神病、家庭内にかかわらずさまざまな問題があるが
それらはすべて「親に傷つけられた子供の親への復讐」だと思っている。
何が哀しいかって、家庭内の問題は長期化し、非常に根深い問題であるにも関わらず、そこには何もない。子供は一生をかけてその復讐を成し遂げるが、成し遂げた先には何もない。ただ子供たちが望んでいるのは親が苦しむことである。
確かに子供が問題を起こせば親は苦しむ。しかし苦しんだからと言って幸せになれるわけではない。誰も幸せにならない。だけど親に傷つけられた子供は親に復讐せずにはいられない。そうしないと生きていけない。
こういう長年の家庭での問題を抱えた子供に対して、親や世間が求めることは「問題を直し、まともな人間になり、親に感謝をし、これからは親孝行ができるような人間になること」である。
しかし解決に向けて本当に大事なことは「いかに子供が親を捨て、親との一切の関わりを断つことができるかどうか」である。
そうした世間と親との感覚のずれが、問題のずれが、家庭内での問題の長期化を進めてしまう。
それがとてもかなしい。しかし目をそむけてはならない重大な問題である。
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