ブルボン党チョコリエール派
参院選の火蓋が切って落とされた。各党の党首が様々な主張を繰り広げ、候補者たちは、限りある議席を死守したり奪取しようと必死である。
2022年現在、日本には9つの党がある。私の子供の頃に比べたら、随分と数が増えた気がする。しかも、党によっては、そこから更に分かれ、派閥やグループというものが存在していたりするのだから、やはり同じ党であっても、個人的な主義主張は、どうしたって違いが出るものなのだ。
近年、明治製菓が、きのこの山、たけのこの里、どっち派?
なる争いを自ら巻き起こし、話題となった。
「きのこだ!」「たけのこだ!」とそれぞれの思いを胸に、多くの方々が清き一票を投じたようだ。ちなみに、私はきのこ派、夫はたけのこ派だ。しかし本心では、どっちも美味しいから両方食べたいと思っている。
こういった、同じメーカーの同じラインナップの商品というものは、
「自分はこれが一番好き」
という自己主張をしやすい。
うちの実家ではこれだったとか、うちのばあちゃんの家ではこっちだった、など、思い返して懐かしむことができるのが楽しかったりする。
プチシリーズなどで知られる、新潟が誇る製菓会社ブルボンには、懐かしさを感じさせるパッケージの袋菓子がある。
一番有名なのは、アイスにもなったルマンドだろう。クレープ生地に上品なミルクチョコがかかっており、一口食べると、サクッ。口の中でホロッ。袋菓子の名作だ。
ホワイトロリータのうっすらかかったホワイトチョコから透けて見えるクッキーのあの絶妙なねじり加減が美しい。
他の菓子には見られないソフトで優しい食感のバームロール。こんなケーキが袋菓子で!? 食べる度に有難みを感じる。
エリーゼに至っては、真田広之主演のドラマ、高校教師を思い出してしまう世代もいるのではないだろうか。中のミルククリームが繊細な味で美味しい。(ちなみにチョコクリームもある)
そして、口にくわえて息を吸えば、空気が美味しくなるルーベラ。
しかし、残念なことに、このルーベラ。今年の三月に製造を終了してしまったそうだ。今現在、ルーベラと名乗っている菓子は、このホイップショコラルーベラビターなのだが、これは箱菓子らしく、これまでの袋菓子のラインナップからは外れた商品のようだ。
まさかのルーベラ終売で、少々切ない気持ちになってしまったが、昭和の時代からこの令和にかけて、国民に寄り添ってきたブルボンの袋菓子シリーズ。私はこれまで長く、ブルボン党バームロール派にいたのだが、この度、派閥を抜け、新たな派に加入した。
チョコリエール派である。
私がチョコリエールと出会ったのは昨年のことだ。
ラジオである芸人さんが、チョコリエールがうまい、と言っていたのを聞き、試しに買ってみたのだ。
それまで私は、生まれてこの方、チョコリエールを口にしたことがなかった。正直言えば、目に留めたこともなかった。
スーパーでチョコリエールを買おうと探していると、バームロールのすぐ隣に並べてあった。こんなにそばにいたのに、なぜ今まで気にも止めなかったのだろう。なぜ一度くらい買おうと思わなかったのだろうか。
不思議に思いつつも、やはり人は見たいものしか見ない習性を持っているのだと思い至り、私はチョコリエールをレジカゴに入れたのであった。
実際食べてみると、同じブルボンのアルフォートよりクッキー感が強く、
全粒粉ビスケットでお馴染みのマクビティより、ザックリ感はない。
チョコリエールには、際立って「これ!」という強い主張はないが、その強すぎないところが食べやすさに繋がっている。
何よりもうれしいのは、個包装された一つの袋に、しっかりチョコを感じられるビスケットが二枚も入っていることだ。
(ちなみに、エリーゼも二本入りだが、ウエハースは口に入れたら幻と化してしまうお菓子なので、食べ応えという点ではチョコリエールが上回っている)
一枚食べ終わっても、まだ袋にもう一枚入っている喜びはすさまじい。恋人同士であれば、袋を開けて「はい♡」なんて一枚ずつ分け合ったりもできる。むほほ。
形状も細長いところがいい。食べやすい。サクサク食べても、もう一枚ある。嬉しい。
この、もう一枚ある喜びを、いつもお皿が「一枚足りない」と嘆いている怪談・番町皿屋敷のお菊さんに教えてあげたい。おそらく、
「もう一枚あるっ!」
そう高らかに言い放ち、喜びのあまりチョコリエール片手に成仏してしまいそうな気がする。
そろそろ怪談の季節ですね。