憲法というルールは誰が守るのか?
法学概論の法源についてのところでも触れたように、日本においては憲法がルールの最高位に位置している。これを憲法の「最高法規性」という。つまり憲法に逆らうことはできないということである。憲法の内容に矛盾するルールは一切が効力を有しないということを憲法98条1項でも明記している。
では、この憲法というルールはいったい誰が守るルールなのか?私たち自身も守らなければいけないルールなのか?ということについては、実は一般国民はこの憲法を守る義務は一切ない。憲法は国家(公権力を行使する側)が守るルールなのである。これは憲法99条にも明記している。
歴史的な話になるので多くは述べないが、日本の憲法は人権と統治の二大規定で構成されている。昔は国の方がエライと考えられていたので、国民の人権を無視しても国を優先してきた。それが敷いては国民のためになるなら国民も我慢できただろう。しかし、国の一番エライ人が私利私欲のために国民に重税を課したり、気に食わない国民を処罰をしたらどうだろう?これに我慢ならなくなって17世紀に市民革命が起き、人権の考えが発展していき、人権を大事にする国のルールである憲法が作られるようになった。もちろん市民革命の前にも憲法があったわけだが、それはいわゆる統治規定しかなかった。統治とは公権力を行使する機関が何をすることができるのか定めている規定である。立法府が法律を作って、行政府がこれを行使し、司法府がそれをチェックする的なことが書かれていることである。この統治規定しかない憲法を「固有の意味の憲法」という。この規定に加えて、市民革命で国民が国家に人権を認めてもらい、国家であれど、国民の人権は侵害できないというルールを作ったのである。これを「立憲的意味の憲法」という。