〔介護を学ぶ7〕介護とは、心にかけて「まもる」こと
そもそも、介護はなぜするのでしょうか。
古典に学んでみましょう。
『仏説父母恩重経』には、親の恩が詳しく教えられています。
親の大恩十種が示されていますが、
今回は、一番目の「懐胎守護の恩」を取り上げます。
◆懐胎守護の恩
「懐胎」とは「懐妊」のことです。
「守護」とは、「守」も「まもる」、「護」も「まもる」。
妊娠してより、親は子どもを守ってくださるご恩が「懐胎守護の恩」です。
「母は、妊娠してから十カ月余り、座っていても、立っていても、
寝ていても、さまざまな苦しみを受け続ける」とのことです。
「好きな食べ物、はやりのドレスをもらっても、
食べたいとも思わなければ、身を飾りたいとも思わない。
ただ、日々念ずることは、元気な子どもを生みたい
ということばかりである」
と教えられています。
「母は妊娠して十月の間、自分の血肉を分けて子どもの体を作る。
そのため、常に重病人のように感じる。こうして、子どもの体ができる」とのことです。
酸っぱいものを欲しがるのは、体が酢酸を要求しているからでしょう。
酸で自分の骨を溶かし、そのカルシウムで胎児の骨が作られるのです。
自分の身を削って子どもの体を作るため、歯がもろくなったり、
髪の毛が痛む女性も多いと聞きます。
重病人のようになるのも無理はありません。
それでも母親は、子どもが元気に生まれてくることを願って、
さまざまに尽くします。
好きな食べ物も、胎児によくないと分かれば我慢します。
風邪でつらい時も、安易に薬はのみません。
胎児への影響を恐れるからです。
◆お父さんも守っている
「懐胎守護」しているのは、母親だけではありません。
おなかの子どもを守る母を「守護」しているのが父親です。
経済面から支えるために稼いでくるのも父の仕事でしょう。
それ以外にも、重い荷物を持つ、ゴミ出しをする、
切れた電球を換えるのも父親の係です。
世の男性が、ゴミ出しをするようになった始まりは、
「懐胎守護」にあるのかもしれません。
◆介護とは、心にかけてまもること
私たちがこの世に生を受けたのは、父母が守ってくれたからこそでしょう。
「介護」の「介」は「心にかける」、「護」は「まもる」という意味です。
親のことを心にかけて、守るのが親の介護ということでしょう。
『父母恩重経』には、「知恩」「報恩」が教えられています。
親から受けた恩を知り、恩に報いることができたら、いいですね。
参考文献
1)木村耕一:『親のこころ』,1万年堂出版,2003