妊婦さんは「カジキ」「マグロ」「天然のブリ」を食べないようにしよう
◆水銀による水俣病
四大公害病のひとつ「水俣病」は、熊本県の水俣湾で発生した公害病です。
原因は工場から排出されたメチル水銀で汚染された魚を、
住民が長期間食べたことによります。
症状は多彩で、手足の感覚が弱くなる、歩行が不安定でふらふらする、
物の見える範囲が狭くなる、眼球がなめらかに動かない、
耳が聞こえにくい、などです。(参考:熊本県ホームページ)
水銀による病気は、過去のものでしょうか。
◆魚に含まれている水銀
水銀は、海底火山から海に放出されます。
プランクトンが水銀を取り込み、それを小魚が食べ、
小魚を大きな魚が食べる。
そんな食物連鎖により、水銀は濃縮されてゆきます。
メチル水銀は神経への毒性があります。
妊婦の場合、妊娠4ヵ月頃から胎児への影響が出てきます。
東北地方の沿岸部で、胎児期の水銀の影響を調べた調査があります。
結果は、臍帯血(へその緒の血液)の水銀濃度が高い人がいて、
その場合、生まれた子供は運動発達が低下していました。
また、12歳の時の衝動・多動の行動と関連がありました。
沿岸部の住民は魚を食べる機会が多いため、
水銀の影響が現れていると思われます。
◆安全な魚は?
日本の長寿は、魚を食べる文化によるとも言われています。
魚には、EPAやDHAといった動脈硬化や高血圧のリスクを減らす物質が含まれています。
「水銀が含まれているから魚は食べない」というのは、
かえって不健康でしょう。
水銀の少ない魚を食べればよいのです。
水銀はどんな魚に多いのでしょうか。グラフにしてみました。
食物連鎖の上位である大きな魚ほど、水銀が多く含まれています。
「カジキ」が突出しており、「マグロ」がそれに続いています。
その中に「天然のブリ」が混じっています。
「養殖のブリ」は、それほど高くありませんでしたが、
餌が人工的なものだからでしょう。
「カジキ」「マグロ」「天然のブリ」、この3つを避ければ、
何とか大丈夫です。
どうしても心配なら、「サバ」と「イワシ」しか食べない
という方法もあります。
ブリは出世魚で、地域によって呼び名が異なるため、
グラフでは「小型のブリ」としました。
メチル水銀は人体に取り込まれても、約2ヵ月で半分は排泄されるので
特に問題はないとされています。
水銀について過度におびえるのも、無頓着なのもよろしくありません。
正しく恐れましょう。
参考資料
1)龍田希, 仲井邦彦:「メチル水銀の健康リスクと曝露回避への提言」,日本衛生学雑誌 75(suppl): S93-S93, 2020
2)渡邉敬浩ら:「食品として流通する魚の総水銀およびメチル水銀濃度の実態調査」,食品衛生学雑誌 58(2): 80-86, 2017