2つのことが同時にできなくなるのは老化のサイン
◆作業スペース
仕事をしている人であればデスク、主婦の人であればキッチンカウンター。
その上はどうなっていますか。
広くて、何も置いてなくスッキリしていると、作業がはかどります。
仕事がデキる人かどうかは、机の上を見れば分かると言われます。
机の上に本や書類が山積みで、仕事スペースが30cm四方しかなければ、
作業効率は落ちるでしょう。
どこに必要な書類があるか、探すのに時間がかかります。
書類を見ながら作業しようにも、まず、こっちの書類の山を、別の書類の上に積み上げて、スペースを空けなければなりません。
台所仕事もそうでしょう。
キッチン台にジューサーやミキサー、鍋、調味料、皿や茶碗、梅干しのビンなどが所狭しと置いてあると、炊事もやりにくいでしょう。
◆脳の作業スペース
例えて言うならば、老化により脳の作業スペースが減っていきます。
脳細胞が死んでいくのは、机やキッチンスペースが少しずつ狭くなっていくことであり、脳にアミロイドβなどの老廃物がたまるのは、台の上に雑多なものが増えていくことに例えられます。
若いころは、脳は予備能力に余裕があります。
たたみ2畳もある机のようなものでしょう。
どれだけ乱雑に物を置いても、十分に作業ができます。
加齢とともに作業台が小さくなっても、すぐには気づきません。
半畳ほどの狭さになると、仕事や家事に時間がかかるようになります。
作業スペースが30cm四方になると、生活に支障が出てきます。
◆2つのことが同時にできなくなる
昔の一万円札の肖像の聖徳太子は、同時に7人の話を聞いて理解したと言われます。
それは無理でも、2つのことを同時にすることはできるでしょう。
例
人の話を聞きながら料理を作る。又は、パソコン仕事をする。
加齢により、脳の作業スペースが小さくなり、
「~しながら~する」ができなくなってきます。
作業に集中していると、人の話が耳に入らなくなり、
人の話を聞いていると、手が止まってしまいます。
老化が進行すると、作業に戻ろうとしても、
どこまでしていたのかがすぐに思い出せなくなります。
車の運転も、助手席から話しかけられると、交差点を曲がるのを間違えたり、ひどい場合、信号無視をしたりします。
人の話を聞いている途中、話したいことを思いついても、
その時に言わないと、後では思い出せなくなります。
歳のせいと笑って済ませるうちはいいのですが、老化と認知症は程度の差があるだけで、本質的には同じものと思われます。
◆脳の整理整頓
どうすれば、脳のスペースを増やすことができるのでしょうか。
運動が最も効果的でしょう。
全身には毛細血管が張り巡らされており、
すべての細胞に栄養を運んでいます。
栄養が行き届かない細胞は弱ってしまいます。
運動により、脳の血流がよくなり、
脳細胞の老化を遅らせることができると言われています。
少しでも歩く、できれば早歩きをしましょう。
歩けない時はスクワットを心がけましょう。
机やキッチンのスペースも大事ですが、
脳の作業スペースの維持にも力を入れましょう。
参考文献
1)青柳由則:『認知症は早期発見で予防できる』, 文藝春秋,2016