クルミが食物アレルギーのトップになる日は近い
◆食物アレルギービッグ3
質問です。
食物アレルギーを起こしやすい食べ物は何でしょう。
①卵
②大豆
③小麦
④エビ
即時型食物アレルギー全国モニタリング調査によると、
2005年からダントツのトップは「卵」であり、他の追随を許していません。
2位は「牛乳」、3位は「小麦」の順であり、
この3つは不動のビッグ3と言えそうです。
しかし、近年、食物アレルギー事情に異変が起きています。
「クルミ」の台頭です。
◆クルミアレルギーの増加
2017年より、クルミアレルギーが急速に増加しています。
クルミアレルギーは、クルミを食べた直後に、くちびるがかゆくなる、口の中がピリピリする、じんましんが出るなどの症状を起こします。
ひどい場合は息が苦しくなって失神することもあります。
小児の救急病院を受診した食物アレルギーの調査によると、
2018‐2020年では、原因食物のトップはクルミでした。
「クルミ」は「来る美」と言われ、
美容効果もあるためか、近年クルミの需要が増えています。
クルミの年間消費量は、2008年に8,000トンであったのが、
毎年増加し続け、2017年には20,000トンにせまっています。
クルミは洋菓子に代表されるさまざまな加工食品に含まれています。
クルミアレルギーが増えたのは、クルミを沢山食べるようになったからでしょうか。
◆クルミは触らない
「二重抗原曝露仮説」によると、荒れた手でクルミを触ることによってクルミに感作される、つまり、クルミアレルギーになります。
その仕組みは、手の皮膚のランゲルハンス細胞がクルミの成分を感知し、
敵と認識するからです。
つまり、クルミを食べるからクルミアレルギーになるのではなく、
クルミをさわるからクルミアレルギーになるのです。
その観点からすると、皮膚の未成熟な乳幼児や、手荒れのある人は、
食べ物を手づかみにしない方が良いことになります。
また、クルミ成分を含む石けんや化粧品は、避けた方がよいと思います。
参考文献
1)皆川優納ら:「食物アレルギーによるアナフィラキシーに占めるクルミの割合の12年間の経年的変化の検討」,アレルギー 70(6/7): 798-798, 2021.
2)海老澤元宏ら:「クルミとカシューアレルギーの増加とその背景」,日本小児アレルギー学会誌 33(4): 549-549, 2019.