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歩いて認知症を予防しよう
◆介護の原因のトップは認知症
介護が必要になる原因の1位は認知症であり、
その割合は介護の4人に1人です。
「あれは私の母ではない。バケモノだ」
別居の母が認知症になり、久しぶりに会った息子の言葉です。
「いつも自分を気遣ってくれる母」
「やさしい母」
というイメージだったのでしょう。
目の前の母は、息子の顔も分からない。
「母さん、僕だよ」と話しかけても、
不気味な笑みを浮かべて、意味不明なことを言う。
そんな母にバケモノを見たのでしょう
げに恐ろしき認知症。
なりたくない、なってほしくない病気でしょう。
◆運動は脳の萎縮を抑える
超高齢社会の到来に伴い、認知症が社会問題になりつつあります。
決定的な解決策は見つかっていませんが、
予防策として有望視されているのが有酸素運動です。
つまり歩くことです。
加齢により大脳の前頭前野と海馬が萎縮しますが、
運動はこれらの萎縮を食い止めます。
それぞれの脳の働きを示します。
前頭前野・・・注意力、集中力、選択力、判断力
海馬・・・・・記憶、学習能
Ericksonらの研究があります。
65歳時に、1週間の歩数距離が多い人ほど、
74歳の調査で前頭前野と海馬の体積が保たれていました。
78歳時には、軽度認知症や認知症のリスクが低かったのです。
また、運動は特定の脳の萎縮を抑えるだけでなく、
脳内のネットワークを正常に保ち、
使っていない脳領域が衰えた脳の代償をしてくれる効果があることも分かっています。
◆認知機能関連ホルモン
有酸素運動が認知症予防になるのは、
どのような仕組みによってでしょうか。
運動により脳や肝臓から様々なホルモンが作られることが分かってきました。
インスリン様成長因子1、脳由来神経栄養因子、血管内皮細胞成長因子、男性ホルモンのジヒドロテストステロンなどですが、これらは認知機能関連ホルモンと言われています。
◆ゆる歩きでも効果あり
どの程度の強さの有酸素運動をすればよいのでしょうか。
中くらいの運動(息がはずむほど)を30分以上と言われていますが、
近年の研究では、ゆるい運動でも効果があることが分かってきました。
茨城県利根町の研究では、月2~6回の運動に加え、自宅で音楽に合わせて行う「フリフリグッパー」なる運動プログラムを毎日30分実施しました。
2年後の調査では、前頭前野の萎縮が抑制され、
記憶の成績が向上していました。
激しい運動でなく、ゆるゆると歩く「ちんたらウォーキング」でも、
十分効果がありそうです。
「幸せは歩いてこない」は、往年のヒット曲の一節ですが、
「幸せは歩くとやってくる」と言えるのではないでしょうか。
参考文献
1)諏訪部和也ら:「認知機能のアンチエイリアシング」,『アンチエイジング医学の基礎と臨床』第3版: 133-134, 2015.