「JR高田馬場駅戸山口」 柳美里
読書感想文です。
柳美里さんの「山手線シリーズ」
上野駅公園口、品川駅高輪口も読みました。
駅や街の「喧噪」を文字であらわす手法が特徴的だなと感じました。
その中にいる感じと遊離した感じ、存在感と浮遊感みたいな感覚に吸い込まれます。
全体を通して「死」に向かっていく危うさ。生きているけど死んでいるみたいな感覚があります。
高田馬場駅戸山口では、もうずっと前から何かが死んでいたような主人公が、子どもを育てる、子どもを守るという強烈な「生きる」にさらされて、必死にもがいているのに世間とか世界から離れていく、遠ざかっていくリアルが恐ろしくも切なく感じました。
品川駅高輪口は、最終的に生き延びるのですが、上野駅と高田馬場駅は、どっちなのかな?と余韻を残す終わり方です。
今回、文庫版高田馬場駅戸山口を読んで、最後の著者のあとがきが心に突き刺さって終わりました。
絶望とは、まだ体験していない未来に疲れることである。
今を生きよう。