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心を清めるつもりが、空腹に負けてしまった話
さらなる清めを求めて賢島へ。
2024年。苦しみの連続で心身ともに疲れ果てたわたしは、伊勢神宮を参拝した。いわゆる「お伊勢参り」である。そこまではよかった。問題は、その後だった。
▼お伊勢参りのその後となります。前回と違って、ゆるーく書いています。ご容赦ください。
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国の登録有形文化財に指定されているという
「さらなる清めを求めて賢島へ」――なんて格好良く書いたが、実際のところ、持っていた近鉄のデジタルきっぷを無駄なく使い切りたかっただけなのだ。
本当は、伊賀上野に行くつもりでいた。伝建地区を歩いてみたかったのだ。ただ、調べてみると思っていた以上に移動に時間がかかる。きっぷも生かしきれない。かといって、このまま名古屋に戻るのでは芸がない。
そんなとき、「賢島」の二文字が目に飛び込んできた。旅番組などでよく見聞きする観光地だが、行ったことはない。確認すると、きっぷのフリー区間内。これは天啓に違いない(違う)。
こうして、早朝からお伊勢参りで心を清めたはずのわたしは、出発地の名古屋には戻らず、まるで会社を休んで反対方向の電車に乗る社畜のような、妙な後ろめたさを胸に、宇治山田駅から賢島行きの電車に飛び乗った。
11:09 賢島行き普通列車に乗車
車内には、テストでもあったのだろう、高校生が数人乗っていたが、次々と下車してしまい、気がつけば一人。何とも言えない寂しさが胸に広がる。この孤独感こそ、旅の真髄なのかもしれない(格好つけ過ぎ)。
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列車は定刻の12時07分、賢島駅のホームに滑り込んだ。心を清めに来たという、およそ理解されがたい事実を隠すべく、仕事で真珠を買い付けに来たバイヤー風の表情を決め、さっそうと改札を抜ける。
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ちょうどここで、おなかが空いてきた。心の清めは身(おなか)を満たしてからにしよう(おいっ)。
駅前のイワジン喫茶室に吸い込まれるように入る。看板メニューと見られるワンプレートランチは、個人的には少し勇気のいる価格だったが、ここは開き直って注文する。心の清めに値段は関係ない、と言い聞かせた。
心して食べた。魚介の出汁がしみこんだパエリアは絶品だった。添えられた小鉢の彩りも鮮やか。見た目の華やかさも相まって、これぞ魂を浄化する味である。
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食事を終え、港まで歩く。数十秒で海が姿を見せた。
薄ぐもりの空の下、ごく普通の海が広がっていた。けがれを落としに来たというのに、海はこちらの気も知らぬ様子で、波音一つ立てない。でも、おなかが満たされたので、正直どうでもよくなってきた。
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眺めること約1分の沈思黙考。…けがれが落ちたことにして、駅へ戻る(早っ)。
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13:15 伊勢中川行き普通列車に乗車
帰りの電車で、小学生の団体と一緒になった。元気いっぱいの子どもたちに車内の空気が華やぐ。本当に清められたのは、無邪気な笑顔を見た、この瞬間だったかもしれない。
結局は、上品なランチを食べに行っただけの旅となった。心は清められなかったが、財布の中身はすっかり清められてしまった。まあ、こういう旅もありかもしれない。
次こそ、伊賀上野に行こう。忍者の術で心のけがれを消してもらおう。ただ、財布の中身も一緒に消えてしまいそうな気がする。
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