【誕生石】トルマリン
以前はピンクトルマリンだったと思いますが、広くトルマリンとします。
ちなみにピンクなど赤系のトルマリンはルベライトと言います。
トルマリンは色範囲がとても広く、耐久性もまあまあありますのでジュエリー向きですね。
トルマリンの名前の由来はシンハラ語の“トゥルマリ”で、スリランカでジルコンの呼称だったものが、そのまま定着したそうです。ジルコンも色範囲が広く、磨けばトルマリンよりギラギラしていますが、原石だと混同しやすかったのだろうか、なんて想像しています。
ジルコンはキュービックジルコニアと混同されて「合成でしょ?」と言われがちですが、立派な天然石です!続きは12月に💎
色範囲の広さ
なにせ、宝石学のテキストに『宝石の中で一番色が豊富』と書いてあるぐらいです。下の写真の標本はドーム型のカボションカットで色合いも淡め、ごくごく一部の色ですが、カット石はもっと光を反射して輝きます。
色による特定の言い方は、前述のルベライトの他、ブルー系のインディコライト、濃いグリーンのクロムトルマリン、三角形のカラーバンドのあるリディコタイトと後述のパーティカラーなどがあります。
色が隣り合わせ
複数の色が見られる石をパーティカラーと言いますが、結晶は上の写真の一番左側のように柱状で比較的大きなカットができることから、長いスクエアカットで2色が楽しめるバイカラーを店頭で見かけることは多いと思います。色の組合せも様々です。
そのうち、中が赤系で周りがグリーン系のものをウォーターメロンと言います。上の写真で柱状結晶の隣の石です。スイカっぽいでしょう?
トラピッチェ
はい、出ましたよ~。トラピッチェ。
Tucsonでエメラルドのトラピッチェを買ったフランスの業者が、池袋の鉱物展に出展した際に購入しました。
Tucsonに行ってから、ずっと催事の案内は貰っていたのですが、なかなかアリゾナまで行けず……でも池袋ならアリゾナと比べると目と鼻の先ですネ。
その人によると、どうやらこれがトラピッチェの成長過程のようなのです。
写真の左から右へ向かって、最初アームは3本で、外から枠が出来て中央に向かってきて、最終的に6本のアームになるのだとか。不思議です。
パライバトルマリンについて
本来は、ブラジル・パライバ州(と隣接する州)で産出されたネオンブルーやネオングリーンのトルマリンをパライバトルマリンと言いました。
0.38ct、小粒ですが今や入手困難な、パライバ州バターリャ産。バターリャはもともと1989年にパライバトルマリンが見つかったところです。
こちらグリーン系。リングのパライバはキントス産、パライバ州に隣接するリオグランデ・ド・ノルテ州ですが、州境の一帯ですので繋がっていると言って良いと思います。1990年代に採掘されるようになりました。
ペンダントは質流れセールで買いました。色合いが絶対リングに合う!と思ったので即決でした。知り合いの宝石商は、これもキントスかもねと言っていました。時期的にはまだアフリカ産が出ていなかった頃です。
2000年代に入って、アフリカでも銅色因のネオンカラーのトルマリンが見つかりました。そのネーミングに物議を醸しました。
💎
上の写真のペンダントは鑑別書付きで、以下の注意書きがありました。
銅(Cu)・マンガン(Mn)・ビスマス(Bi)などが検出されている事を示しています。これらの成分が検出され、特有の色調を呈するトルマリンは、一般にパライバ・トルマリンと呼ばれております。
これは、アフリカ産が出る前のものです。
その後、JJA(社団法人日本ジュエリー協会)は2006年5月からパライバトルマリンの定義を以下のように決めました。
「銅、マンガンを含有するブルー~グリーンのエルバイトトルマリン」については下記の条件を分析レポートに記すことで、別名パライバトルマリンと呼ぶ事を認める。
1.「当初産出された地名に因んで、“パライバトルマリン”と呼ばれています。但し産地を特定するものではありません。」
2.銅及びマンガンの含有量とその測定機器名を明記すること。
その年のJJF(Japan Jewelry Fair:業界向けトレードショーです)でパライバのセミナーを受けました。バターリャとキントスはたまたま州境が間にあるだけですが、海を隔てたアフリカまでも「かつては繋がった大陸だったから」などと言ってしまうと何でもアリになってしまい、なんともモヤモヤした気持ちが残りました。
同じ色合いならまだしも、市場で見かけるアフリカ産の多くはブラジルに比べて水っぽい印象でしたので、だったら「ネオンカラーの綺麗色トルマリン」で良いではないかと思うのです。
パパラチアサファイア、インペリアルトパーズ等もそうですが、その名前がつくだけで値段が跳ね上がってしまう世界です。売る方も売りやすいのでしょう。
でも、ですよ。鑑別書を持ち歩くわけではないので、逆に「パライバの鑑別は出ない」綺麗なトルマリンが買えるとかなりお買い得ということです。
モゴクのルビーが、カシミールのサファイアが、ムゾーのエメラルドが全て綺麗なわけではありません。審美眼を磨いて、名前や産地に惑わされないようにもしたいものです。
※モゴク、カシミール、ムゾーはそれぞれ有名な産地です
💎
ところで。
上の写真のパライバトルマリンをリフォームしたいなと思っています。
リングは恐らく量産枠にはめただけと思われ、上下の飾りの部分が指に当たって痛いです。
ペンダントは質流れで、どうして手放されたのかなと思うと、それほど腰深(厚みのある)石でもないのに高さがあり、胸の上で転んでしまいます。チェーンにはステーションでダイアがセットされているので、工賃もかかったろうに勿体ないですね。
問題が、グリーン系はオーバルとペアシェイプ、ブルー系はスクエアと、カットが全然違うこと。ブルー系をリングにして、グリーン系をペンダントにまとめるか、全部一緒にするか、悩ましいところです。
#トルマリン #パライバトルマリン #誕生石 #10月 #10月の誕生石 #宝石 #宝石鑑別 #GIA #GraduateGemologist #毎日note #日記 #エッセイ #スキしてみて