惜しまれるうちに去りたい
母も姉も同じことを言っているので、我が家の家訓だったのかもしれません。
「やっといなくなるか」と思われるより「もっといて欲しかった」と思われる方が、多少は存在価値があったかなという気がします。
社内へはまだ退職のアナウンスは出ていないので、後任が入社したことで察した人もいれば、入社は増員だと思っていた人もいました。
「増員じゃなくて私が辞めるの~。アハハ」
と何人かに伝えたことで、その後はじわじわと広まったようです。最近は
「いつまでいてくれるんですか?」
と聞かれることが増えました。”いてくれる”がちょっといいなと思いました。
香港の同僚が東京出張することになっていたのが、コロナで延期になっていたのを復活させました。当初、上司は渋っていました。そういえば、コロナの間に上司は代わっています。
「いや別に私は辞めるからいいんですよ。でも、彼女しかやっていないこと、私しかやっていないことがあって、それをお互い知っておくための出張だったわけでしょう?彼女がコロナに罹患した時はたまたま在宅勤務できたから給与は払えたけど、もし入院していたら?私も先週締めの時に具合悪かったけど、もし高熱でも出ていたら?私たち、今の状態だとお互いのバックアップもできないんですよ?私はBCPの観点から言っています。でももう一度言いますが、私は辞める側なので、別に無いならそれで構いません」
その後にあった定例webミーティングの時、上司は彼女と私に残るように言いました。お、もしや?
「給与が終わって落ち着くのは月末頃だよね?8月末か9月末あたりの1週間、どこが良いか2人で相談して」
東京出張、復活!
「でも……彼女(私)が辞めちゃったら、私は誰に聞けばいいの?」
その時に同僚が珍しく弱音を言ったことにキュンとしてしまいました。
「心配しないで。Aさん(後任)にはちゃんと引き継いでいくし、今回の出張はそのためのexchangeだから!」
その後は、いつにする~?何食べる~?と一緒にキャピキャピしました。
同僚の心配もわからなくはないです。経験値は違いますから……。
以前、宝飾師氏にジュエりんごを作るのにどの位時間がかかるか聞いたことがあります。
「そんなに時間はかからないけど……でも、それが3時間だったとしても単に3時間じゃなくて、30年プラス3時間だからね!」
そういうことなんですよね。私が今の会社でサクサク効率良く仕事をしているように見えても、それは過去の幾多の失敗や、関係先からの助言や調べたことなどで出来上がっていて、引継ぎに3か月かけたからといって全て引き継げるものでもないのです。
最近、上司がビビり気味なのもちょっと面白いです。