若者の力
WBC一次リーグ最終、オーストラリア戦。円陣の声出しは横浜ベイスターズの牧秀悟選手だった。
「こんな最高のメンバーでやるの、あと4試合しかないです。きょうも絶対勝ちましょう。いきますよ、さぁいこう!」
歳のせいにはしたくないが、今回のWBCは涙腺が緩む瞬間が多すぎて困っている。牧選手の言葉にもうるっときた。そして、東京オリンピックのときの村上宗隆選手を思い出した。
今回、村上選手は思うようなプレーをできず、悔しそうな表情を見せている。チームが好調なだけにより苦しいのかもしれない。私などにはトップアスリートの苦悩は想像もできないが、東京オリンピックのときに同じ表情をしていた鈴木誠也選手のことも思い出した。
日本の4番と呼ばれ、しかし一本が出ず悔しそうにする姿は、ファンとして辛かった。なんとか打ってほしい、絶対に打てるのに。
だからアメリカ戦、横浜スタジアムの青い客席に叩き込まれたホームランは本当にうれしかった。
同じく思うように結果が出なかった田中将大投手が、円陣の声出しで「俺以外はみんな頑張ってる」と言ったとき、すかさず「そんなことないっす!」と声を上げたのは村上選手だった。選手たちの笑い声が響き、田中投手の頬も緩んだ。
そのときの村上選手も、もちろん日本代表に欠かせない選手だったけれど、メンバーの中では若手で、それでも固くなりがちな先輩たちを鼓舞するようによく声を出していた。
昨日の牧選手があのときの村上選手に重なった。
今の村上選手があのときの鈴木選手に重なった。
だからきっと、あの胸のすくようなホームランが村上選手にも生まれると信じている。
そしてきっと次の世界大会でも、すごいメンバーにも臆せず声を上げる若者が見られる。
ここまで、負けなし。ここからは負けられない。
東京オリンピックは全勝だった。
さあ、応援しよう。