僕と青春と『九月の空』
こんにちは。
久しぶりの記事更新です。
小説は毎日書いていまして、ようやく原稿用紙の200枚に到達しました。順調に行けば、800枚から1000枚ほどの作品になる予定です。ですが、このように長い小説は、どこの出版社も公募してませんので、完成しましても暫くの間は、パソコンで眠ることになるでしょう。いやいや、きっと。
さて、先日剣道の試合が行われていたらしく、勤務先の最寄り駅には防具を持った少年少女の剣士が溢れていました。彼らを見て、僕は昔を思い出し、心の中に燃える何かを見つけました。真っ赤に燃える何か。
僕も剣道ではありませんが、武道を励んでいた時期がありました。高校生の頃から、20代前半までで、今は全くやっておりません。
あの頃は、正座し、礼をし、鍛錬し・・・。それらの独特の世界観は、未だに記憶に刻まれています。
青春小説はたくさんありますが、武道と青春と小説を書いている作品は、少ないような気がします。僕が知らないだけかも知れませんので、ご存知の方がいらっしゃったら、コメントいただけると幸いです。
そんな稀有なジャンルの小説の中で、高橋三千綱先生の『九月の空』は有名です。芥川賞の受賞作でもあります。
この作品は思い入れがありまして、熊本から京都の大学に行った時、友人ができるまでの孤独を愛した時期に、安普請のアパートでひたすらに読みました。確か、実家から送ってもらった荷物の中に忍び混んでいた一冊です。
部屋には、机もなく、椅子もなく、布団だけです。パソコンなし、インターネットなし、携帯電話もパケット代の問題であまり使えない(時代ですね・・・)、このような環境で、『九月の空』を読んでいました。懐かしい。
この本には、『五月の傾斜』『九月の空』『二月の行方』の三部作が合わさり、一つの本を成しています。芥川賞は、この中の『九月の空』が受賞しました。3部に分かれていますが、主人公の小林勇と、それを囲む人らの群像劇の一年間が描かれています。
合宿を通して強くなる高校生がいたり、義理堅い高校生がいたり、母の経営するBARを手伝う高校生がいたり、主人公に恋する高校生がいたり、と様々な人間模様の描き方が秀逸です。初版が昭和54年ですが、決して古い作品とは思えません。人間が進化していないのか、青春は何年になっても不変なのか、いやいや、『九月の空』が名著だからでしょう。
武道に励んでいた方や、青春を想起したい方におすすめの一冊です。
あ、思い出したのですが、本の主人公の小林勇は牛乳配達をしています。僕も中学高校と6年間新聞配達をしていたので、そのような接点が幾多もあり、『九月の空』にハマったのかも知れませんね。
読んでいる本と、自分の環境が似通った時の嬉しさは、筆舌に尽くしがたいものですね。
花子出版 倉岡