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⑨ 健康的な食生活大作戦、さて外食はどうするか

 さて、美味しいものだけを食べて痩せる大作戦、外食の話だ。

 ダイエットの本などを読むと、スパゲティやオムライスのような単品は控えて、品数の多い定食などをとか、いろいろ「健康的な外食」について書いてある。
 うどんやラーメン、パスタなどは主に炭水化物だから、外で食べる際も、野菜とタンパク質をとるように、と。
 そしてなるべく油を使わず、蒸し料理がいい、生野菜は身体を冷やす、汁物漬物は塩分が多い云々……。

 なかなかめんどくさい。
 食べられる店も限られてくる。

  私も退院した直後、外食時しばらくは、おばんざい(京都の家庭料理)が食べられるお店で、野菜多め、たんぱく質しっかりのものを口にしていた。野菜中心のビュッフェとかにもよく行った。
 家でできる料理はレパートリーが限られているし、何しろ品数をつくるのがめんどくさいので、外食でそういったものを食べるのは楽しくはあったし、「健康な食生活をしている」という満足感もある。
 塩分と糖分の塊のような、ラーメンやパスタ、オムライスなんかはもう一生食べられないんだろうな……なんて考えもしていた。
 お店に入って、メニューにそれらのものがあっても、目をそらすしかなかった。

  けれど「健康的な外食」ができるのは、さまざまな食事の選択肢がある状況ではないと、難しい。それにお値段が安くはないのだ。吉野家の牛丼の3倍ぐらいしてしまう。
 そんな食生活は、健康的ではあるんだけど、私はやっぱりたまには外食で、オムライスやドリアなどの「ザ・炭水化物」のようなものが食べたかった。
 それに外食の醍醐味は、自分では作らないものを食べることにもある。世の中には、「食に興味がない」人が、わりといる。食は栄養補給に過ぎないのだと。けれど「食が生活最大の娯楽」という人も、少なくない。とにかく美味しいものが食べたいと。食は娯楽でもあり、趣味でもある人が。どうやら私は後者のようだった。
 入院中に、食事しか楽しみがないと考えていた。この楽しみを奪われたら、生きていても楽しくないと。美味しいものを食べたい。食を楽しみたい。
 よく年取った人が「食しか楽しみがない」と言うが、私もそんな年になったのだ。

 けれど、健康第一の食生活、さらに減量もしたい。
 そのふたつを、どう両立させよう。

  退院して、運動を始めてから三ヶ月ほどすると、はっきりと病院の検査でも、数値が下がってきたこともあって、私は「食べたいものを食べる」ことにした。
 あくまで家では徹底して健康的な食生活を続けるが、外食ぐらいは食べたいものを食べよう、と決めた。それが生きる楽しみなのだから。
 それでも、昼にオムライスを食べたら、夜は軽くサラダだけ、ナッツだけとか、調整はしている。とにかく夜は普段からも、軽めにする。そうすれば翌朝の朝食が美味しい。
 というか、このような生活で、だんだんと量が食べられなくなってきた。がっつり食べられるのは、一日一食までだ。そうじゃないと胃がもたれて気分が悪くなる。
 ただ、一日一回でも、栄養価やカロリーを考えず、好きなものを食べることで、脳が満足するのが実感できた。脳が満足したら、食べ過ぎない。
 思えば、倒れる前は、適当なものを食べて、脳が満たされず、そのあとお菓子を口にしたりもしょっちゅうだった。
 昼も夜もがっつり食べて、胃もたれしたり、お腹をくだすことも、わりとあった。退院後は、そういった胃の不調もなくなった。

  脳を満足させるためにも、美味しいもの、好きなものを食べることは正解なのだ! という結論に達した。

 よく、短期間で大幅減量した人の体験記なんどを読むと、食生活が本当にストイックだ。肉は茹でた鶏むね肉だけとか、炭水化物を完全に抜いてしまったり。もしも我慢に我慢を重ねて、そこまでストイックな生活をしていたら、すごいことではあるけれど、私は長続きしない自信がある。
 今までも、グレープフルーツダイエットやら、食べるものを限定したダイエットは何度かして、痩せはしたけれど、すぐにリバウンドをしての繰り返しだった。
 若い人が、短期間で痩せるのは、それでいいかもしれないが、おばちゃんは、食べる楽しみ優先で、無茶はしたくない。人生はもう終わりに近づいているのだから、楽しく生きたい。その「楽しく」の中には、食の楽しみも含まれている。
 もっと食事制限をしたら、20キロとか痩せられるかもしれないとも考えはしたけれど、でもやっぱり美味しいものを食べることは、やめられない。

  退院して数日後、入院費を支払いに外出したあと、家の近所のカフェでご飯を食べたとき、おいしすぎて泣きそうになるぐらい感動した。
 好きなもの、美味しいものを食べるのは、幸せだ! と、しばらく入院していたからこそ、痛感した。

  好きなもの、美味しいものを食べることをやめない私のダイエットは、ずいぶんとぬるいかもしれないが、一年で10キロ落ちたし、まあ成功としたい。
 それに、前述したが、この年で痩せると、皮膚が収縮せずに、たるむ。
 だったら、このゆるゆるペースでいいかもしれないとも考えるようにしている。

 でも、こうして美味しいものを食べても体重が落ちるのは、運動をしているからだということは忘れてはならない。

 



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