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英読書会-夏目漱石「三四郎」

夏目漱石「三四郎」(1908)読書会の記録(2019/5/27)
参加者:英、SHさん、MOさん

●人々の雰囲気がリアル。モデルがいるらしい。三四郎は漱石の門下生の九州出身者と言われいる。与二郎もモデルがいそう。
●男性キャラがなよなよしてるな。
●美禰子は「イプセンの女」(女性の自立は良しとされる価値観が芽生えていた時代)。恋愛となると、そのぐらい女性が自立してないと成立しなさそう。
●広田先生は漱石自身っぽい。正岡子規の話を出すのはちょっと切ない。三四郎は先生を尊敬する一方、何を考えてるか分からないという描写もある。
●バブルの頃の大学生は「卒業すればなんとかなる」モラトリアムの雰囲気はあったが、それと共通する。
●西洋化に違和感を感じる当時の日本と、漱石の意見が出てきている。当時、西洋のものを翻訳しているだけの人たちに対する批判的な意見があった。そういえば漱石の「I love you」を、日本人は愛してるなんて言わないから「月が綺麗ですね」と訳すのが良いでしょうと言ったというエピソードがありますが、信憑性ある。
●終盤、学生演劇、どんな劇やねん(笑)。ハムレットに対する違和感。日本の口語演劇がまだ確立していない時代。
●広田先生の意見、「偽善家」と「露悪家」の繰り返しの話が興味深い。東洋的封建社会と、西洋的な自立した自己、双方へ対しどちらが良いとも言わない。
●漫才みたいなやりとり、ちょいちょい出てくるな。
●三四郎は成長しているのか??西洋小説のような縦軸の「成長」ではない。横に世界を広げるという意味での成長。漱石、「そんなに人間成長するのかよ」と思ってそう。成長小説の類型→主人公が成長の途中で終わるタイプ。
●でも三四郎が美禰子さんに「貴方に会いにきた」と伝えたのは「頑張ったやん!」と思う
●広田先生の暗闇とは?漱石自身、あまり家族に恵まれなかった。コンプレックスもあったことを作品ににじませることもある。先生は最後まで何を考えてるのか分からないが、最後に少しだけ人間味のある面をのぞかせるような描写。
●美禰子は教養あり自立している点では、「虞美人草」の藤尾や「草枕」の那美さんに共通するヒロイン。だが、謎めいたことを言って男を「弄ぶ」ような感じではない。まだ若く、自分でも自分がよく分からないのではないか。不器用で可愛いところがある。しかし女性は早く大人にならなくてはいけない時代。迷っているのに、女性の生き方に乗せられてゆく。自由の可能性は、迷いでもある(それが「青春」)。
●美禰子の家、どうなってるんだろう。両親がおらず、兄は不在がち?若い未婚の女子が自分名義でお金を引き出せたりするものなの?だからこそ早く身を固める必要があったのかも。
●美禰子と三四郎の別れの場面。恋が叶わなかったが、美禰子が三四郎にだから見せた一面もある。三四郎にとって美禰子は迷える羊。美禰子にとって三四郎との繋がりは香水のハンカチの香り。出会った時は、美禰子は白い花の香りをかいで三四郎の前に落としていった。別れる時は、白いハンカチの香りを自分の袂にしまう。美しい対比。
●漱石の絵画への造詣がまた出てくる。「草枕」では、ヒロインはついに描かれないまま終わったが、美禰子は描かれている。完成した絵画を見て満足そうにする美禰子の夫が彼女を「所有」しているかのような態度は、美禰子は嫌だっただろう。
●広田先生目線、美禰子目線などで読むとまた違ってきそう。

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