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さくらももこ「ひとりずもう」読みました

ちょこちょこSNSで見ては気になっていた、さくらももこ先生の「ひとりずもう」上下巻を読みました。


創作する人はみんな読んだらいいよ。

いや別に創作してない人もぜひ読んでほしい、面白い、という前提なんだけど、創作する人は特に、ぶわっ!ってなると思ったの。

あ、これ知ってる。

ってなると思う。

作中で「え?わたしが漫画家?手塚治虫と同じ職業になろうなんてちゃんちゃらおかしいよね……」って何回も諦めようとしたり、理由をつけて描かないようにしたり、自分に言い訳したり、友達に夢を聞かれても言えなかったり、言えたとしても「いやわたしがそんなこと言うなんて変だよね」って予防線を引いたり

さくらももこもそうなの?って思う。

それこそ、「私がさくらももこのこと『わかる』だなんて同じ土俵で語るなんて、ちゃんちゃらおかしいよね」なんだけどね。

息をするように絵を描いてました!!!!
子供の頃からずっとマンガ家を目指してて
ゴリゴリ描いてました!!!!!

っていうのも私は好きだけど、

「書けない…」っていう私、「自信ない」っていう私、「またダメだった」っていう私、を、包み込んでくれる、励ましてくれる作品だと思った。

「まるちゃん」の絵柄でゆるっと描かれる、エッセイの天才の描くエッセイの出発点


それは、お父さんが買ってきてくれたカブトムシであり、生理に悩む思春期の女の子であり、「なにもしない」ことが大好きな高校生であり

そんな彼女が、漫画を描くぞって決めるまでの過程、描き始めてからの日々が、熱く胸に迫ってくる。

SNSでスクショが回ってくる

「美人じゃなくても、天才じゃなくても、お金持ちじゃなくても、他の何にもなれなくていいから、漫画家になりたかったな」

と、お風呂で泣くシーンも、あれだけ見ても泣けるんだけど、そこまでのストーリーがあるともっと違って見えるよ。

だって、ももこはずっと、なりたいものなんてなかったんだよ。毎日を「なにもしない」ことに一生懸命で。毎日のなかのキラキラを見つけるのがすごくうまくて……。

お金持ちのところについては、八百屋の娘なんてやだっ!みたいなところはあったけど、なんか全部、かわいい中高生の「あーあ、おしゃれになりたいなぁ」みたいなレベルのものしか描かれてないなかで、

「漫画家」というのがいかに彼女の心を強く掴んで離さない存在なのか、どれだけなりたいのか

というのが、詰まっていると思った。

そしてそのあと、ハッ!とアイデアが降ってくるシーンもお風呂場なのがすごくよくできている。

「私は人生が変わるかもしれないという予感がした」

ひとつのことをずーっと考えてて、それが他のなんらかのきっかけでバチッとつながることを、「これ描いて死ね」のなかだと「エウレカ」っていうと紹介されていたことを思い出した。


流れ星に願いを言って叶うのは、流れ星が流れた一瞬でもさっと言えるくらい、いつも強く願っていることだから…というのを私は割と信じているんだけど

この場合の「漫画家になりたい」というのも、この類の願いのように思う。

なお、「ひとりずもう」のなかにもひろしと一緒に流れ星を見るシーンがある。「ちびまる子ちゃん」よりひろしがももこを溺愛してて、親子関係もよくて微笑ましい。

どんなに才能があって、どんなに創作が好きでも、行動しなかったら、かかなかったら、世に出さなかったら、「さくらももこ」は静岡の八百屋の娘だったのだ。

SNSの切り取りスクショ見て、「ええやん〜」となってるみなさん。

ぜひ本編ぜんぶ読んでみてくださいませ。

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猪狩はな|教育ライター
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