#11.ショートショート 「有象無象」
自分が話した事に対して
みんな私に同意する
みんな私の意見に賛成する
自分の意見を言う人が誰一人としていない。
全員が全員、誰かに操られている糸人形。
そんな事を思っていたら、いつしか周りの人間が皆んな同じ顔に見えていた。
私はあなたの意見を聞きたい。
私の意見に反対なら、私の意見と違うのなら、自分はそうは思わないと
自分の言葉を伝えて欲しい。
全員が全員肯定なんてある筈がない。
心の中では何を思っているのか分からない。
私はそれが一番怖い……
「…それって違うんじゃない?」
ある時、初めて違う意見を述べた人がいた。
初めて自分の事を否定してくれた人がいた。
驚いて私はその人の顔を見た。
周りは人形の顔をしているのにその人だけは、ちゃんとその人の顔だった。
この時私は、初めて信頼できる人に出会った。