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鉛筆の軌跡をたどって / 『せん』(スージー・リー)
今日は、「せん」という絵本をご紹介します。
走る鉛筆が滑走の軌跡に
この絵本のはじまりは、一本の鉛筆が描く線から。
最初はゆっくりと進んでいく線は、いつしかおおきくのびのびと描かれ、線とリンクして、女の子の滑走も力強く生き生きとなっていきます。
鉛筆の濃さ・薄さ・力強さだけで、女の子がどれだけ気持ちよく氷上を滑っているかが伝わってくるようです。
この絵本には文字としての言葉はありませんが、鉛筆の軌跡を追っていくだけで、滑走音が聞こえてきませんか。
女の子がひとりで滑走する場面はもちろんですが、後半の女の子とたくさんの子どもたちが登場するシーン(特に前の人の肩に手を置いて一緒に滑るところ!)が、冬の幸せに満ち溢れていて大好きです。
スージー・リーさんについて
スージー・リーさんは、ソウル生まれの絵本作家です。今までの絵本は、ヨーロッパ、アメリカ、アジアの国々で出版され高く評価されています。2016年には、韓国人初の国際アンデルセン賞画家賞にノミネートされるなど、大活躍の絵本作家です。
今年の私の悔いは、スージー・リーさんが来日されていたというのに、イベントに行けなかったこと。距離を言い訳にしていると、チャンスを逃してしまうぞ、と自分に言い聞かせ。いつかお会いしたい方です。
八戸市にも先日、大きなスケート場ができました。
スケートになじみのある土地へやってきた私ですが、運動神経がポンコツなために、スケートというと、両手を抱えられた宇宙人のように氷上を「歩いた」記憶しかありません。けれどいいのです、この絵本に出会えたので、気持ちよく滑れた気分です。
訪れる季節ごとに楽しめるのが絵本の魅力のひとつだと思っています。
冬の1冊に、ぜひ読んでみてくださいね。
(↑以前地元紙デーリー東北での連載の際掲載したイラストです)
書誌情報
「せん」スージー・リー・作/絵(岩波書店)
岩波書店さんのウェブサイトでは、見開き4ページ見ることができます。(以下の文はウェブサイトより)
「すべての物語は,一本のせんからはじまる」――えんぴつの先から一本のせんが生まれ,スケートぐつをはいた赤いぼうしの少女がすべりだした.そこは白い氷のうえ.少女はのびやかな曲線を描き,軽やかにジャンプ! ところが…….世界的絵本作家スージー・リーが贈る,驚きと幸福感にみちた魔法のような絵本.
amazonをみていて気づいてしまったのだけれど、英語版は表紙が違う!
さりげない変化にウキウキ。原書版も気になります。
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