ロールケーキ:新たな脅威にさらされて
シンプルなケーキといえば、何が思いつくだろうか。多くの方はショートケーキだと答えるのではないだろうか。しかし、それよりもさらにシンプルなケーキ、それがロールケーキである。
私には、ずっとお気に入りのロールケーキがあった。家から少し離れた駅にあるケーキやさんのロールケーキで、ふんわりした生地の中に優しい味の生クリームがたっぷりと入っているのが特徴だ。それを食べると、包み込まれるような幸せな気分になれるのだった。
しかし、最近ではそのロールケーキを食べることが少なくなった。それはなぜか、理由はひとつ。手軽に食べることのできる美味しいロールケーキを見つけたからだ。もったいぶらずに教えよう、ローソンのロールケーキのことである。
もちろん、味は冒頭のケーキ屋さんには敵わない。だが、その安さと手軽さを加味すれば、ロールケーキが食べたいとき、ついつい手を出してしまう位置付けに躍り出てくるのだ。私だけに限った話ではない。SNSにおいても、ロールケーキをはじめとするローソンのスイーツは話題を集めている。
そのおかげなのか、ずっとお気に入りだったあのロールケーキを食べることは少なくなった。
今まで、この問題に対してちゃんと向き合ったことはなかった。しかし、ある時この問題に対して、深く考えさせられる出来事が起こったのである。それは、近所にあるケーキやさんの営業時間が伸びていたことだ。そのすぐ近くには、ローソンがある。もっとも、本当にローソンのロールケーキがその引き金となったのか、その真相は定かではない。しかし、その一件のおかげで気づいたのである。
技術の進歩により、今まで脅威でなかった相手も脅威になりうる時代がきたのだと。
自動車業界においてはこの現象が顕著である。EVや自動運転の進歩が、他産業から自動車産業への流入をもたらしているという話を聞いたことがあるかもしれない。しかし、それがケーキ屋さんにも起きている問題だということは、盲点だった。大きな企業がより安く美味しいケーキを提供することで、既存のケーキ屋さんが脅かされているのである。
もちろん、ローソンのロールケーキに罪はない。美味しいケーキが手軽に食べられることは、消費者にとってありがたいことだ。しかし、既存のケーキやさんは新たな脅威に怯えている、もしくは苦しめられているのではないだろうか。そんななかで大切なのは、やはりオリジナリティだろう。ここでしか食べられないこの味、それを生み出すことで生き残っていくしかないのだろう。
競争の激化はより美味しいものを生むのだろうか。それとも、一辺倒に傾くのであろうか。一消費者として、見守っていきたい。