見出し画像

冬虫夏草

買ってから随分経って読み終えた本。写真は滋賀県、守山市に行ったときのもの。

虫夏草 https://honto.jp/netstore/pd-book_28423033.html

『家守綺譚』というお話の続きになります。

こちらも大変おすすめです。

琵琶湖疎水に近い場所で、亡き友人の家に借りずまいしている「綿貫」の日々を彼の視点から綴った物です。

綿貫は人間とも、それ以外のものとも仲良くできる人で、彼の周りにはいろいろな登場動物・登場植物・その他、この世のものでない人、人でない存在、などがいるのですが、その中でもひときわ頼りになるのが、ゴローという愛犬です。

このゴロ-に色々あって、綿貫は旅に出て、またそこで色々あって、というお話です。

前作では基本的に家(京都?)のまわりの出来事でしたが、この『冬虫夏草』後半は京都を飛び出し、東近江市~鈴鹿山中への旅の記録、という風情になっていきます。

旅先とか、宿の描写、東近江~鈴鹿山中で出会う人々が交わす言葉などの描写に説得力があります。

綿貫はどこの生まれの人なのか示されていなかったと思いますが、彼も、京都で暮らす綿貫のご近所さんもあまり方言を使わないようです。対照的に、鈴鹿山中で出会う人々のしゃべり方が非常に効果的に表現されていると思います。

綿貫は、鈴鹿山中の村々で生きるものたちの生活を一時的に目撃し、その生活の話を聞き、共有し、彼らが見ている物を見ようとします。

特に、ある不幸に見舞われた人を偲んで彼が取る行動、そしてそれが引き起こす出来事が強く感情に訴えかけます。

100年前の鈴鹿山中に生きる人の記録を読む、なんだか民族学と文学の間のような作品です。読んで良かった。


この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?