<イタリアの民事婚と教会婚について(法科大学院生向け)>
1 以前の投稿について
以前,イタリアの離婚(民事婚)要件の緩和について,投稿しました。
https://note.mu/hamamatsu/n/n183babe71a65
ところで,民事婚(民法に基づき婚姻する一般の婚姻)以外にイタリアでは何かあるのか?ということになります。
イタリアでは,ローマカトリックの総本山はローマ市内(ただし,イタリアではなくバチカン市国ですが)にあることもあり,ローマ教会の教会婚(宗教婚)も認められているのです。
2 教会婚の法源について
1929年のコンコルダート(1984年に改定)です。コンコルダートは,ローマ教皇と国家との間の取り決めであり,国際法上の条約のフォームに近い合意です(1929年のコンコルダートはムッソリーニがバチカンを国家として認める,という点で世界史ではおなじみかと思います。)。
3 民事婚との差は?
教会婚についても,民事婚と同様の効力を与えられます。教会婚も民法に定める夫婦の権利義務に従います。聖職者は,挙式から5日以内に,婚姻登録(民事婚も登録されます。)を申請することになっています。
ただし,既に当事者が民事婚を登録している場合,民事婚上の要件を欠く場合(年齢等)等は登録されません。
4 教会婚における要件の判断
教会婚における婚姻障害,当事者の同意や挙式(挙式は要件です)の有効性の判断は,宗教裁判所が行います。この宗教裁判所での命令は,イタリアの高等裁判所の裁判官により承認されることとなります(外国での婚姻無効判決の承認と似ています。)。一方,離婚や別居等については,宗教裁判所ではなく,一般の民事裁判所がこれを扱います。
5 他の宗教婚について
基本的にはイタリア法によることとなりますが、ユダヤ教徒やワルデンシアン(プロテスタントの一派)については,別途立法がなされています。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?