先生からもらった、命を守るプレゼント
2023.3.10
浜益小学校に津波用ライフジャケットが寄贈されました。
ライフジャケットに津波対策用があることを知り
津波が来たらひとたまりもない小さな小学校の
全児童に、このライフジャケットをと尽力してくれたのは
ほんの1年だけ、この学校にいて息子の担任をしていた先生です。
浜益小学校は海抜2メートル、海からそう離れておらず、周りには小高いところもない場所にあります。
そんな学校なので、津波想定の避難訓練では、先生たちの車に乗り込むよう訓練されていて、誰がどの先生の車に乗るかまで細かく決められています。
ただ、非難する道は2本しかなく、大きな川が並行しているため、川水がやってくるまでにどこまで逃げられるのかが不安なところ。
3.11の震災以降、避難方法の心配はあるものの
幸い、これまで深刻な津波被害は無い地域で
それほど議論されずに今まできました。
(ちなみに数年後には高台に移転することが決まりました。)
前述の担任は、現在5年生の息子が2年生だった2019年に浜益にやってきました。
先生が浜益にいたのは、この1年間のみ。
社会教育の道に進みたく、年齢的にも最後のチャンスになりそうだということで、早いお別れとなったのです。
でも、ほんの1年いた、この浜益小が、子どもたちが、先生を動かしたと言います。
もしも津波が来たら、この子たちはどうなるのか
災害はいつやってくるかもわからないのに、このままで良いのか
疑問に感じた先生は2019年当時、3.11の津波でたくさんの児童が犠牲となった大川小を訪ねました。
そこで語ってくれたのは、わが子を津波で亡くした親御さんたちだったそうです。
先生が現場で見たもの、聞いたこと、私たち保護者を集めて教えてくれました。
子どもたちを守るために、何かしなければならない
何もしないのは人災だ
先生の話を聞いたときには、よし私たちも動かねば!
そう思ったのに、結局は何のアクションも起こせなかったのです。
PTAみんなで危機感を共有しよう、何かアクションを起こそう
そう話していたのですが、2020年
コロナの出現によってPTAが集まることもできなくなってしまったのです。
そうして先生も異動。
喉元過ぎてしまうと日々の生活に追われ危機感が薄れていきました。
しかし先生は異動後もたびたび連絡をくれて
子ども用のいいライフジャケットを見つけた!と
実物を持ってきてくれたり
クリスマスが近くなるとサンタの恰好でプレゼントを届けてくれたり
離れたところからいつも浜益の子どもたちを想ってくれていました。
そしてこのたび、浜益小にライフジャケットを贈れることになったよ
との知らせが入ったのです。
驚きでした。
保護者である私たちが何もアクションを起こさずにいたのに、先生はいまだに浜益の子どもたちのことを考えてくれていて、動いてくれていたのです。
小学校での贈呈式
「ただいま!」
と、話し始めた先生をニコニコと見つめる息子たち。
おかえり!このままずっと浜益小にいてよ、の気持ちだったと思う。
私でさえそう思ったのだから。
毎年クリスマスプレゼントを届けてくれた先生は
この津波用ライフジャケットがあなたたちへの最後のプレゼントです、と話しました。
先生が何年もかけてたどり着いた、命を守るためのプレゼント。
今後は避難訓練時にライフジャケットの着用も練習するとのこと。
でも、これで終わりではありません。
「これは命のリレーです」
先生はそう言います。
浜益小のように、危険な場所にある学校は他にもあり
その全学校にライフジャケットを備えるべきだと話してくれました。
一番安全なのは、学校を高台に移転することなのだろうけれど
現実として、それをすぐに実行するのは難しかったりします。
小さないのちをどうしたら守れるのか、真剣に考えてくれた先生のバトンを受け取った私たち。
真剣に考え、今度こそ行動を起こす
私たちが受けた恩を必要としている次の誰かに送る
それが先生への恩返しになるのではと思っています。
こんな先生に出会えた子どもたち、保護者の私たちは
とても幸せです。
そして、先生の想いを受け止めて、ライフジャケットを寄贈してくださった
カザワトレーディングカンパニーの加澤社長
本当にありがとうございます、という言葉ではまったく足りないくらいに、感謝の気持ちでいっぱいです。
当日の様子は地方テレビニュースでも放送されました
私たちにできる第一歩は
津波用ライフジャケットの存在を広く伝えること
あの手この手で、このライフジャケットの存在を伝えていきます。
いざというときに身を守れるよう
もっと普及しますように。