「新しい働き方フェス」へ参加した後、妻から言われた一言
9/23(月)に東京・晴海で開催された、ランサーズによる「新しい働き方フェス」。
藤原和博さんによる講演をはじめ、多くの著名な方にご登壇いただいたこのフェスは、「自分の新たな可能性を探る」をテーマにした新しい形のイベントだ。受付の段階で800名近くの参加申込。フリーランスや副業の方によるスキルマーケットなどもあり、当日はかなりの盛り上がりを見せた。
僕はその実行委員、妻はブース出展者として参加させてもらっていた。
*
20時。フェスが無事に終わり、片付けを終えたみんなは打ち上げ会場に向かう。僕たちは子どもを親に預けてのフェス参加だったので、すぐさま家に帰らなければならない。
みんなとの別れを惜しみつつ、一路静岡に向けて車を走らせる。
「今日のフェスはすごくよかったよね」
フェスの興奮冷めやらぬまま、僕は妻にそう言った。
「そうだね……。私はなんだか途中で泣きそうになっちゃったよ」
妻はハンドメイド品販売を通して色々な人と交流していたので、きっと貴重な体験や刺激があったのだろう。妻にも参加してもらって本当によかったな、と思った。
でも、妻が言いたいのはそういうことではなかった。
「あなたが会社をやめてライターの仕事を始めたとき、あなたは1人きりだったでしょ。1日中パソコンに向かって、いつも1人だった。でも今日はあんなにたくさんの素敵な人たちに囲まれていて、すごく楽しそうだった。つい半年前までは1人ぼっちだったのにね」
……ああ、そうだ。そうだった。
2年前、これといったスキルも無いまま、次の転職先も決めずに会社を辞めた自分。目の前にあったのは、暗くて広い宇宙空間のような心もとなさだった。
12年間勤めた会社を辞めてみると、まるでこれまでの基盤や人間関係すべてが消え失せたように感じた。自分なりの覚悟を持って決断したものの「これまでの時間は無駄だったのだろうか」と、強い喪失感に襲われた。
働き方を変えたことで、目的としていた家族との時間は増えたけれど、仕事に対する不安感や孤独感、そういったものが僕を蝕む。オンラインを通じての仕事は手軽にできるメリットはあるものの、それは同時に簡単に仕事を失いやすいことでもあるのだ。
パソコンを使った慣れない仕事。顔の見えない仕事相手。まるで真っ暗な湿ったトンネルの中を手探りで這っているような感覚。僕より一回りも若いフリーランサーがどんどん前に進んでいく。焦りと十分な努力ができない自分への失望。
今思えば、いつ潰れてもおかしくはない状況だったと思う。でも、心折れずにここまでやってこれたのは「人との出会い」があったからだ。
・田舎フリーランス養成講座での出会い
・家に泊まりに来てくれた方との出会い
・地元コワーキングスペースでの出会い
・「新しい働き方LAB」での出会い
どの出会いも欠かすことのできないものだけれど、今回は「新しい働き方LAB」について触れたいと思う。
* *
「新しい働き方LAB」はランサーズが運営する、多様な働き方に対する気づきとなる場を、全国のフリーランスと一緒に共創するコミュニティだ。
今全国にはLABのキャンパスが続々と増えていて、その場を通じて様々な出会いやつながりが生まれている。
僕は当時、LABのことなんてまったく知らず、ある日突然メッセージが届いたことでその存在を知った。
メッセージの内容は「6月に伊豆下田でワーケーション(ワークとバケーションを組み合わせた造語)をやるので参加してみてはどうか、もし興味があればWEBで1度お話しましょう」というものだった。
僕はとりあえず、話だけ聞いてみることにした。
* * *
後日、指定された時間にやや緊張しながらビデオ通話をつなげる。
「!?!?!?」
目の前にいたのは、ナイキの野球帽をかぶった、ニヤニヤした兄ちゃんだった。
僕はてっきりスーツを着た、ちゃんとした人が出てくると思っていたものだから完全に動揺した。もしかしたら僕は騙されたのかもしれない。
「あっ、ランサーズの根岸と申します!」
見た目とは裏腹に物腰は丁寧だった。話す内容もいたって普通だ。ひとまず、ランサーズの社員であることに間違いはなさそうだった。
はたして室内で帽子をかぶる意味はあるのかな……。あまり会話に集中できない状況の中で話は進み、僕はよく分からないまま伊豆下田に行くことになった。
ビデオ通話が終わり念のため「ランサーズ 根岸」で検索してみると、根岸さんは取締役CMO(最高マーケティング責任者)であることがわかった。
「マジか…」と呟きつつ、さらにこんな記事を見つけた。
僕がランサーズにいる理由(ワケ)1 ~『努力する権利』を守りたい~
これを読めば、根岸さんがどんな想いを抱えながらランサーズで働いているのかがわかると思う。
こういう想いを持った人が、ナイキの野球帽をかぶりながら取締役として働ける会社、それがランサーズなのだと、そんな認識を持った。
* * * *
2週間後のワーケーション当日。
現地に着くとランサーズの社員が迎えてくれた。ランサーズからは根岸さんだけでなく、市川瑛子さん、星野莉奈さんという2人の女性も来ていた。
僕は長年接客業をしていたこともあり、初対面の印象を割と重視する傾向がある。
2人の印象は抜群に高かった。それは容姿云々ではなく、内側から溢れるエネルギーの高さによるものだ。
まるでこれからドングリを拾いに行くリスのような、2人ともそんな好奇心旺盛な目をしていた。
ちなみに市川さんは新しい働き方LABの所長を務めており、その経歴もピカピカだ。彼女について詳しく知りたい方は「'98年。たった一枚の折り紙で、私の人生を変えてくれた母の話」を読むのがいいと思う。
星野さんはいわゆるワーキングマザーで、仕事と子育てを両立させながらランサーズで働いている。ほんわかした印象とは裏腹に、これまで世界各国をガンガン飛び回っていた行動派。ランサーズのTwitterアカウント「新しい働き方LAB」中の人でもある。
このワーケーションの間ずっと感じていたのは「ランサーズの社員って、なんだか社員っぽくないな」ということだった。
普通会社に勤めていると、様々な責任を背負ってしまうためか、どうしてもコミュニケーションに「壁」のような堅苦しさを感じることが多い。それはなかなか隠しにくいから、話していればけっこうわかる。
でも3人と話していて、そのような壁を感じることはなかった。あったとしてもその壁は低いし、めちゃくちゃ脆い。壁が崩れても「ま、いっか!ハハハ!!」みたいな感じ。とにかく風通しが良い。
みんなが「自分の好きで働いている」という印象を受けた。
そこで気づいたことがある。
僕が「会社に勤める」ということに対して、ある種のマイナスな考えを持っていたということだ。
・会社に勤めると嫌なことでもやらなければならない
・会社に勤めるのは自分1人で稼ぐことができないからだ
・会社に勤めるのは自分に本当にやりたいことがないからだ
でも3人を見ていて、その考えは間違いであることに気づいた。
「たとえ会社に勤めていたって、嫌なことにはNOと言えばいいし、それで辞めさせられても仕事は他にもある。今ランサーズで働いているのは、ビジョンに強く共感しているからに過ぎない」
ランサーズの3人からは、こんなメッセージが感じられた。
このメッセージは僕の働き方に対する視野を広げてくれたのと同時に、「こんな会社もあるんだ……」と、なぜか安心感をもたらした。憑き物が落ちたような不思議な感覚だった。
* * * * *
だいぶ長くなってしまい恐縮なのだが、これで最後なので聞いてほしい。
今回のワーケーションは「LivingAnywhere Commons」と協力して開催されており、仕事として現地での体験レポートを書くことがセットになっていた。
LivingAnywhere Commons(LAC)
場所やライフライン、仕事など、あらゆる制約にしばられることなく、好きな場所でやりたいことをしながら暮らす生き方(LivingAnywhere)をともに実践することを目的としたコミュニティ。
メンバーになることで、日本各地に設置したLivingAnywhere Commonsの拠点の共有者となり、仲間たちと共生しながら、自宅やオフィスにしばられないオフグリッド生活を体感、理想のLivingAnywhereを実現するための技術やアイデアを共創していく、刺激に満ちた環境に身を置くことができる。
〈LivingAnywhere Commonsホームページより引用〉
参加者で話し合って各自がどんな記事を書くのか割り振り、僕はヴィレッジインクの梅田さんという方をインタビューすることになった。
ヴィレッジインクはプライベートキャンプ場を運営している会社で、”グランピングの先駆け”としても知られている。実はヴィレッジインクはLACのメンバーで、今回のワーケーションでは伊豆下田にあるイベントスペースを提供してもらっていたのだ。
僕はワーケーション2日目の朝、梅田さんにインタビューをさせていただいた。
インタビューを始めて数分。
「これは大変なことだ……」と頭をグラグラさせていた。
・40歳手前で未経験な仕事への転職
・将来に対して抱いていた恐れや不安
・子どもや家族に対する思いや考え方
・自分の中で大切にしたい価値観
梅田さんの歩んできた人生や考え方、価値観そのどれもが、自分に向けて、このタイミングに合わせて周到に用意されたメッセージのように感じられたのだ。
僕がそれまでずっと感じていたような思いや悩みを持ちながら、果敢に、しかも ”心底楽しそうに” チャレンジしている人が目の前にいる。僕もこんな風にありたい、心からそう思った。
ちなみにその時のインタビュー記事がこれだ。
伊豆下田をもっと面白く! NanZ VILLAGEの梅田直樹さんが語る、ここまでのこと。そして、これからのこと。
僕はこのインタビュー記事を書き上げるのに、今までの仕事とは比べものにならないくらいの時間と熱量をかけた。妻にも何度も読んでもらい、読みにくいところ、わかりにくい表現を繰り返し直した。まったく苦にならなかった。
正直に言うと、僕はそれまで約1年半ライターとして仕事をしてきて「この記事は僕が書きました!みんな読んでください!」と手を上げられるような記事は1つも書けなかった。
でもこの記事は違う。
この記事を書き上げたとき、1人でも多くの人に読んでほしい、これは僕が書いたんです、心からそう思えた。
この記事が世間の文章と比べて優れているとかそういうことではなくて、「僕にも自分で価値を感じる仕事ができるのだ」そう思えたことが大事なんだと思う。
この記事を書けたことは、間違いなく今の自分のエネルギーになっている。
そんなこんなを経て、僕は「新しい働き方LAB」のメンバーになり、今に至る。LABを通じての出会いがどれだけ僕にとって大きなものだったか、少しでも伝わればうれしい。
* * * * * *
冒頭の妻からの言葉を思い出す。
僕が新しい働き方フェスを通じて得られたものは、「みんなで1つのものを作り上げるという体験」そして「それを分かち合える仲間」だった。
こう書くと、まるで高校生の学祭終わりの感想にしか聞こえないかもしれない。そして実際のところ、その通りなのだと思う。
僕が会社を辞めたとき、これから先夢中になって1つのものを作り上げる仲間ができるだなんて、まったく思っていなかった。妻さえ理解していてくれればそんなもの必要ない、1人でやっていけると思っていた。
でも本当は仲間が欲しかった。寂しくてたまらなかったのだ。
妻の一言でそれに気づかされた。
あれほど強く感じていた孤独感は、今はかなり後ろの方に身をひそめている。もちろん、孤独感は完全には消えていないし、これから先も消えることは無いだろう。
でも「少なくとも僕は1人ではない」そう思えたこと、そう思えていることが何より大事なように思う。
LABの皆さん、ランサーズの皆さん、そして当日フェスにお越しくださった皆さん、すべての人に感謝を伝えたい。
本当にありがとう。
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そして本当の本当の最後に、LABメンバーであり、先日僕のことをnoteに書いてくれたライターのさやかさんに触れさせてもらいたい。
ほぼ同時期にライターとしてフリーランスの道を歩み出したさやかさん。実は彼女とは独立して間もないころ1度顔を合わせている。
当時はお互い目の前のことで精一杯だったためか、踏み込んだ交流を持つことはなかった。そこからもう少しで2年が経とうとしている。
2年ぶりにLABを通じて再び出会ったとき、まるで戦友に会ったかのような心持ちがした。さやかさんもそれと近いものを感じていたように思う。
夢に向かってひた走るさやかさんの背中を見つつ、僕もここまでがんばれた。(実は今回のnoteもさやかさんに影響を受けて書いている)
まだまだ彼女には及ばないが、僕も夢を現実にするために努力を続けていきたい。
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