2024年3月20日の少し前に
「わたしという物語を語り継がれたい」と書いた伊藤計劃がこの世を去ってから、もう15年が経とうとしている。今の世界はますます歪んでいて、世界の解釈という手段で個人がその人だけの物語を持てるようになったと言われているけれど、その代わり「世界」という大きな物語に信念を委ねる安楽を失った。物語がいまや、人間を振り回し、分断させる時代になった。その中で個人/故人が物語として生き残ることは、正直、少し難しくなった。だれも、そんな場合じゃなくなってしまったのだ。
解釈1つで無が有になり、有