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自分を助けるためにはじめたことが、誰かを助けることもある 〜オンライン作業会の話

 在宅になって一週間としないうちに、危機感をおぼえた6月半ば。

 出社しなくなって良くなったことはタイミング的にはとても助かった。ある種のあたらしい薬を服用し始めなければならなくて、一日ほとんど眠っているかのような日が続いていた。とにかく、身支度して、外に出ることがハードだった。

 そのことは同時に、外に出なくなるということへの危惧も示していた。案の定、人と話さない、一歩も外に出ないような日が続いた。
 薬のせいもあったが、リズムを外的要因に求められない状態では、意識的にそれを作る必要がある。なのに、まったくその胆力がない。そういう状態だったから、仕事のために出かけなくて良いという状況はある意味助かったし、同時にある意味では悪循環ともいえた。

 しばらく(仕事が少ないこともあり)死んだようなまいにちを送っていたわけだけど、ふと思いついて、自分と同じような……とまではいかなくとも、同じ在宅ワーカーさん、フリーランスの人、就活生で授業はないけどタスクを抱えている人、といった人たちをあつめ、オンライン作業会を開催することにしたのだ。


開始当日の目標は、起きていられること。

 私がまず掲げた目標は、起きて、そこにいられること。
 薬の眠気は強力で(いずれ慣れるらしいが)容量がふえたばかりだったので、なかなか起き上がる覚悟がきまらないようなだるさを伴う。
 それでも、約束があればなんとか起きられるだろう。最悪、体調までおかしくなったら中座すれば良い。
 そういうことに理解のある仲間ばかりで集まっているところも、気楽にはじめることができた大きな理由である。

効果は、ばつぐんだ

 内容としては、ZOOMというオンライン会議ツールを使う。会社の朝礼のような感じで10分ほどおしゃべりを交えて「やること」を宣言し、それからマイクを切って各自30分集中作業。そして、残りの時間でやったことを報告し合い、解散する。
 作業そのものを進めるというよりは、朝一番に気になる案件に手をつけたり、苦手で後回しにしがちなものを思い切って片付けたり、または一日のタスク整理をしたりして、そのあとの在宅作業にはずみをつけるのが目的。

 やるぞと決めても一人ではなかなか難しかったことが、「起き上がって、パソコンまで歩いて、声を聞いて、声を出して、励まし合う」というすべての要素によって助けられ、思った以上の効果を感じることができた。

気の重いタスクは目の上のたんこぶ

 苦手なタスク、気の重いタスクほどしつこく長く居座っているし(要は先送り癖)、居る間ずっとこちらを威圧してくる。
 やると決めて片付けたのがそういう重さのタスクだと、そのあとのフットワークがぐっと軽くなるのだ。それに、なぜだか気が重いタスクほど大きく見えているもので、手をつけてみれば思った時間の半分もかからずに済んでしまったりもする。

自分の明日に繋がるタスクは栄養剤

 また逆に、日々の仕事や雑務に追われて自分の目標に近づくための行動ができていないと、どんどん悲観的になり、覇気がなくなっていく。
 人生を通してまでやりたいと思うことは、言い換えればそれがないと心が生きられないことかもしれないのだ。
 忙しさに追われていても、この30分が区切られていることで、そういった行動に毎日着手しやすくなる。
 たった30分でも、できることは案外ある。必ず変化はおきるし、なにより、今日という日だけを見ても、その30分が残りの23時間30分に命を与えてくれる。

ほんとうに手を離したくないことからは、離さない

 タスクには2つあると思っていて、ひとつは、最低水準を満たしたり、底を上げたりするもの。
 もうひとつは、もっと自分を高め、進めるもの。どちらも大切で、どちらも自分を助けてくれる。
 たしかに、仕事がこなせていないと他のいろんなことを犠牲にする羽目になってしまうし、部屋が散らかっているとそれだけで時間も削られ精神も落ち着かない。
 だからといって、やらなければいけないことに追われてほんとうにやりたいことができていなければ、やっぱり心が死んでしまう。
 だから、一日のうち30分だけでも、命に水やりをする。ととのえるための30分でも、育てるための30分でもいい。

人と一緒にやること

 在宅で仕事をしていると、外に出ないのもそうだけど、人に会うことが格段に減る。
 もともとそんなに人と会うのが得意ではない私だけど、さすがにずっとつづくとどこかおかしくなる感じがある。

 オンラインとはいえ、人の声に触れ、リアルタイムに会話し、報告し合ったり褒め合ったりしてそれぞれが頑張る姿を共有する。
 フリーランスなのに、ひとりじゃなく働ける環境はとてもいい。

案外、同じような悩みをかかえている

 今回、思い切って声をかけてみたら、思いのほか反応があった。

 やはり同じような環境で仕事をしていると、コントロールが難しいと感じたり、ペースを作るのが大変だったり、なにより孤独な作業が続いたりと、抱える問題も似ているということなのだろう。

 自分が助けてもらうつもりではじめたことで思いがけず喜んでもらえる結果になった。
 人が喜んでくれること、それ自体も大きなモチベーションになっている。
 簡単に集まって作業をするだけのつもりが、気がつけばひと手間かけて「みんなの作業実績シート」を作って達成感を可視化できるようにしてみたりと、一人だと絶対にやらなかったようなことを楽しんでいる。

 学生の頃、試験前になると友達と図書館に集まって一緒に勉強したことを思い出したりして、ちょっとうきうきする。


 オンライン作業会、おすすめです。

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