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足を運ぶたびに進化する里山里海イタリアン~3度目の「Villa della pace(ヴィラデラパーチェ)」
ここに来るたびに思う。なんてすばらしい風景なのだろう。
「Villa della pace(ヴィラ・デラ・パーチェ)」に足を運ぶのは、今回で3度目。
先の2回はオーベルジュでもあるこちらに宿泊させていただいたが、今回は和倉温泉に宿をとり、そこからお店に向かった。
夕方、タクシーで和倉から湾沿いを走る。
風が少し強かったこの日。静かなはずの湾に、波がたつ。自然は来るたびに表情を変える。そこからもうヴィラ・デラ・パーチェのステージははじまっているのだ。
レストランに入ると大きな窓に能登の風景が切り取られる。日が少し伸びてきた初春の今、だんだんと暮れゆく能登の風景は、まさに非日常でどこか異国にトリップしてきたような錯覚を覚える。
ゆったり外を眺めていると、最初の一皿が運ばれてきた。
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原木しいたけ「のと115」のスープ。
シェフ自ら裏山で育てたしいたけを、じっくりと乾煎りして出汁をとり、塩のみで味をつけた滋味あふれる一品。
最初にあたたかいものをとることで、これから続く料理が体に負担をかけず美味しくいただけるようにとのシェフの気遣いも込められている。
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続くアミューズ4品。金沢「magazzino(マガジーノ)38」のストラチャテッラチーズのミルキーなこと。どれも一口でなくなってしまうのが残念だが、余韻は長く残る。
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真鰯。朝とれの真鰯を発酵メロンのソースをはじめ、数種類のソースでいただく。さっぱりとした酸味が脂ののった鰯と溶けあう。ぽってりとしている鰯ながらシュッとした輪郭のある繊細な味わい。
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ノドグロ 能登大納言 中島菜。甘くない小豆餡に浮かぶノドグロ。旬も終わりを迎える中島菜は漬物と軽く塩をしたもの2種を添えて。ちょっと意外な組み合わせながら、このまとまり方はさすが。一口ごとにどんどんのめり込むようにはまる一皿。
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タヤリン 岩海苔。タヤリンにはイカ墨が練り込まれ、ソースは岩海苔という真っ黒なパスタ。地味なビジュアルながら、里海の恵みがふくふくと感じられる。見た目と豊かで深みのある味のギャップが面白い。
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ラザーニャ 毛蟹。舌をとろかす濃厚なカニ味噌とカニの身がこれでもかと贅沢に平たいパスタの間に詰められている。蟹好きにはたまらないラザーニャ。
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畑。いったい何種類の野菜や野草が入っているのか。この一皿のためにどれだけの仕事がされているのか。一つひとつの個性を生かすために、生だったり、焼いたり、ゆでたり、発酵させたり。裏山でシェフが体を張って毒見をした野草も入っているとか。里山の恵みをめいっぱい感じられるスペシャリテ。
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ズッパディペッシェ。直訳すれば魚介のスープ。畑が里山なら、このズッパディペッシェは里海の恵みを存分に感じられる一皿。プリっぷりの牡蠣など具材もさることながら、やはりメインは魚介のエキスがたっぷり溶け込んだスープ。濃厚だけどすっきりとクリアな味わいは、さすがシェフのワザ。
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スープはもちろんリゾットに生まれ変わる。お腹いっぱいでも食べたい絶対外せない一皿。
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七面鳥 のと115。石川県阿岸の七面鳥と原木しいたけのと115の競演。日本でも3軒しかない七面鳥の生産拠点の中のひとつ、阿岸の新鮮な七面鳥を使うから提供できる内臓は、生でも食べられるくらいの鮮度で、肝は歯ごたえがありながらとろりとなめらかな驚きの美味しさ。
特筆すべきは七面鳥の脂でコンフィされたのと115。それだけでも十分すぎるほどうまみが凝縮されているのに、さらに七面鳥の脂とは。カットして一口。すぐに頬が緩み目じりが下がる。まさに至福。
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そして、ヨーグルト 八朔、ストゥルーデルとデザートが続き、魅惑的な里山里海のコースは幕が閉じる。
ここではいつも満足だけでは終わらない。必ず思う。もっと違う季節も楽しみたい、また新しい一皿に出会いたい――。
だから決めた。4回目の予約を。
次はどんな進化を目の当たりにできるのか。どんな自然の風景に出会えるのか。期待をしつつ、次の予約を楽しみに待つことにしよう。