「庭」の恵みを直接テーブルへ~「Les Tonnelles」(1)
毎月野菜を届けていただいている金沢のぶどうの木農園さん。
そもそもぶどうの木の農園で育つ野菜は、ぶどうの木の敷地内にあるレストランで提供されているもの。
それが最近になってお取り寄せが可能になり、家でも楽しめるようになったのですが、この元気で味の濃い野菜をシェフのワザで堪能したい!ということで敷地内のレストラ「Les Tonnelles(レ・トネル)」さんに行ってきました。
ぶどう園と農園に囲まれたぱっと見ビニルハウスに埋没しそうなシルエットですが…
入り口を入ると
広く落ち着いた空間が現れます。
店名のレ・トネルとは、軒先や庭に設置する棚やドーム状に組まれた木製のエクステリア「パーゴラ」を指し、そもそもそれは「ぶどう棚」が語源で、ぶどうの木のレストランにゆかりある言葉だとして付けられたんだそう。
店の前にも横にも、そして中にもぶどうの棚。
まさにぶどうの棚の中に作られたレトネルの空間は日本を代表する建築家・坂茂氏によるもの。
ドーム型の店内、天井の柱やテーブルやいすなどは坂氏のデザインの特徴である紙管で構成され、その曲線のフォルムがよりいっそう温かみを与えています。
さて、この素晴らしい空間で味わえるのは、ぶどうの木農園でとれる野菜が主役のモダンフレンチ。
シェフはフランスの星付き店舗でスーシェフを務めた砂山利治さん。
ぶどうの木オーナーがフランスの出張の際、たまたま行ったレストランで働いていたという砂山さん。
ご両親の実家が能登にあったこと、そこで幼少期を過ごしたことをはじめ様々なご縁とオーナーの考えるレストランの思いに共鳴し、ぶどうの木のシェフに就任されたそう。
今回は砂山シェフのおすすめコース(8000円)をオーダー。
料理も空間も楽しんでほしい、という思いから、まずは入り口近くの紙管のソファとローテーブルでくつろぎながらのスタート。
紙で作られた3段バスケットが何やらやってきました。
展開すると、アミューズのメニューがころんと入った一段、ほかの2段に前菜が入っています。
ダッシュ豆。
新種の豆ではなくスナップエンドウなのですが、ゲストが到着したときに、じゃんけんで負けたスタッフが200m先にある畑にダッシュでとりに行くからダッシュ豆。
豆は取り立てが新鮮で一番おいしい、というシェフの思いが込められた一品。
まずはそのままで、そして添えられた甘エビを丸ごと使った濃厚なソースをつけて。
アスパラブーケ。
農園のアスパラを猪のベーコンで結んでブーケに。バターをかけながら、あロゼで仕上げてあり、イノシシのベーコンのコクと相まってアスパラのうまみを濃く感じられる一皿。
次は牛蒡と書いてあるけれど…
と思ったら中央に移動してシェフの前へ。
シェフ自らサイフォンで七面鳥のスープを火にかけ牛蒡のエキスを抽出し、チーズのもととなるカードの入った器に注ぎ、ゲストがまぜまぜ。
そう、モッツァレラをスープで作るんです。
これは面白い!
作り立てもっちもちのモッツァレラと滋味あふれる薫り高いスープをいただきます。
プチチーズ作り体験が終わりテンションが上がったら奥の農園が見渡せる席に移動して、本格的にコースがスタート。
テーブルにあるメニューはぶどうの紙傘をイメージ。
カトラリーは富山県高岡のFUTAGAMIさんの真鍮のもの。
器はすべて九谷焼作家の森岡希世子さん。
準備は整いました。さて、これからどんな砂山ワールドが繰り広げられるのか、期待が膨らみます。
そして扉の写真の一皿に続いていくのですが…それはまた次回に。