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メトロノームとデジタル時計

 きょうもジョギングができた。すっかり秋めいた青空の下でトコトコ走る気分は爽快この上ない。
 
私はジョギングではイヤホンを装着しない。シリコンで耳の肌が荒れるためだが、朝の街のざわめきや自分の息づかいを味わうこともジョギングの魅力だから。

 「その代わりに」というわけでもないが、スマホのメトロノームアプリを鳴らしてペース管理にする。準備運動のためのウォーキングは135/分、ジョギングは185/分である。道で遭遇する方々はカチカチと喧しいジョガーだと思ってるだろうなあ。これはスロージョギングを提唱する田中宏暁さんが「ペースは180/分で」と書いていたことを援用したもの。180ではいささかゆっくりすぎるために185にして、運動強度は歩幅で調整する。

 玄関でシューズの紐を結んでいる時からメトロノームのカチカチ音を聴いていると、ふと、なんだか時限爆弾のカウントダウンを聞かされているような、えもいわれぬ焦燥感を覚えることがある。

 世の中お年寄りには「数字が表示されるデジタル時計が嫌い」という方がいるらしい。「人生の残り時間が刻々と減っていくのを突きつけられるような気になる」のだそうだ。なるほど、私のカチカチ音への気分もこれに通じるものがあるのかもしれない。

 それに比べてアナログ時計にはそうした焦りを突きつける要素が感じられない。「昔から見慣れている時計だから」というだけでなく、針が円環運動を描くことは時の流れの不可逆性を突きつけないのかもしれないな、などと考えていた。
(23/10/16)

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