「お前はもはや客ではない」
長年の習慣で朝はNHKのニュースをつけっぱなしにしているが、このところは連日のように衆院選の政見放送に“ジャック”されちゃっているので、仕方なく民放各局をザッピングする日々だ。
改めて実感したのだが、どの局もエンタメ情報やファッション情報が主体であるために、私にはおしなべてびっくりするほどつまらない。
占いコーナーが定番だ。各局ともその時間は瞬間視聴率がアップする、つまり占いを狙ってチャンネルを渡り歩いている視聴者が一定数いると聞いたことがあるが、その感覚もわからない。昭和の名僧・沢木興道は著書「禅談」の中で「辻占(おみくじのこと)でいい卦が出れば喜んで悪い卦が出ると落ち込むなどはこのうえなく愚かだ」と言っていたことを思い出す。
もちろんわかっている。視聴率の区分でもワシのような定年間近のアラカンおやぢは、朝の番組が想定するターゲットからは一番遠い存在。「広告を見てもらって消費を動かす」というビジネスモデルから見ると存在意義がない透明人間に近いのだ。
考えてみれば思い当たる。洋服にもエンタメにもゲームにも、とにかく消費意欲が微塵も湧いてこない。。コロナ禍では同僚と外食することもめっきり減った。最近は図書館を利用することで読書までが経済活動に寄与しなくなった。そんな化石のような男に楽しんでいただくような番組作りなんて公共放送さんにお任せしておけ、というのはビジネスとしてまったく正しいのだろう。
それでも「視ていただかなくても結構です」と門前払いを喰らっている気分になるのは、ちょっと切ないものだ。
(21/10/27)