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“オーラ”が凄い

菫ちゃんのオーラ

 藤井聡太竜王(現在五冠)の登場で盛り上がる将棋界だが、ここまで圧倒的な強さを見せつけられるとタイトルを獲ったり防衛したりでいちいち驚くこともなくなってきた。「ライバルが出現して、もうちょっとハラハラした勝負を見せてくれないとせっかくのブームも沈静化してしまうのではないか」など、部外者が余計なお世話ですかね。

 囲碁では史上最年少の10歳でプロ入りした仲邑菫二段が早くもタイトルに挑戦した。結果は第一人者の藤沢里菜四冠に連敗しての敗退だったが。

 将棋ほど熱心にウォッチしているわけでもないが、3年前にプロ入りした際の騒ぎはすごかった。なにしろまだ小学生だ、注目された記者会見ではほとんど何もしゃべることができず、報道する側をガッカリさせたことをよく覚えている。

 正直にいえばこの際は、「藤井フィーバーに沸く将棋界に対抗した話題づくりなのかな」と思っていたが、わずか3年でしっかりここまで来るとはたいしたものだ。

 対戦前のインタビューで藤沢四冠はこう話していた。「菫ちゃんは4、5歳頃からオーラが違っていて、ものすごく強くなるだろうと確信していた」

 なるほど、人間同士が盤をはさんで何時間もにらみ合う頭脳スポーツだ、言語化できない盤外でのあれこれは余人にはわからない。将棋では大山康晴十五世名人の威圧感に若手はすっっかり“呑まれてしまった”というし、“ひふみん”こと加藤一二三さんが板チョコをいきなりバリバリと一気食いするパフォーマンスもこれを狙っているのではないか。

“オーラ”って何だろう?

 仏教でもキリスト教でも、聖なるものをモチーフにすると頭部に“後光”が描かれることが多く、どうもこれがオーラを表現しているものらしい。しかし菫ちゃんは“聖人”か?

 さらに。

 私は70年代オカルトブームの端っこにいたが、「うしろの百太郎」などでは霊魂と同義としていたような記憶もある。棋士たちには霊魂が見えてしまうのか。

 菫ちゃんは控えめに見ても「可愛いらしい」。しかしお母さんによると「性格が悪いと言ってもいいほど気が強い」とのことで、あの目ヂカラだけでも勝負への執念がすごいことがわかろうというものだ。

 他方、なんとなくほわっとした印象の藤井聡太五冠について“オーラ”と結びつける証言は聞こえてこないような気がする。

サラリーマンが感じる“オーラ”

 社内で社長や会長に遭遇すると、思わず「おっ」と気分が一歩引き下がるものだ。オーラに気圧されている。しかし、彼らのことをまったく知らない街のおばちゃんから見れば、単なるジイさんに過ぎないだろう。
 
 つまり“オーラ”とはおのずから備わっている普遍的かつ物理的な実体ではないのだ。その人物への敬意や畏怖を感じてしまう受け手側の心のありようが、相手の風貌と結びつく際に出現するのではないか。これがいまの結論。
(22/5/4)
 


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