逆ギレしたら負け
トシを取ると気力と体力が衰えてくる。これは仕方がないことかもしれない。しかし国のリーダーという立場の人間がその重責に耐えきれずに逆ギレしては、ダメだろう。
韓国の尹大統領が昨夜突然「非常戒厳」を宣言した。国会や地方議会の活動を禁止、言論と出版は戒厳本部の統制を受ける、社会の混乱を助長する集会を禁止する、などの内容で、実際に軍が国会内に突入した映像も流れてきた。
報道によると支持率が低迷していたほか、総選挙で与党が大敗して予算審議が紛糾していたという。しかし、だからといって“戒厳令”を出しちゃうという判断はどうなのか。完全な逆ギレである。報道では野党はおろか与党もまったく知らされていないままのサプライズだったようだ。
これを受けて、深夜にもかかわらず一般市民が国会を取り囲んで抗議したほか、きょう未明には国会も全会一致で解除を要求する決議を可決した。つまり“身内”である与党からも総スカンである。しかたなく、宣言からわずか6時間後に解除を表明した。
軽い。言動と判断がなんとも軽い。民主主義を停止させる戒厳令を軽々しく出して、反発されると即引っ込めるとは、カードゲームで手札を場に並べているのとは違うのだ。
そもそも野党や国会議員、そして市民の反発が読めなかったのか?「権限でできることはなんでもやっていい」と思い込んでしまう権力の罠。それを無闇に振り回す姿はアメリカのトランプさんに似た匂いを感じるぞ。もうちょっとマトモな政治家かと日本人の立場から期待していたのに、ガッカリである。
さあ、これからが大変だ。現地ではさっそく大統領の弾劾に向けた動きが出ている。こんなことをしでかした大統領だ、野党はもちろん与党だって支持は難しい。弾劾されることになるのだろう。あるいは内乱罪の適用か?
そうなればつぎの大統領は当然ながらまた左派から出てくることになる。北朝鮮寄りで反米・反日路線を売りにする、つまりはあの“悪夢のような”文在寅政権のコピーの再来だ。ユン大統領の任期切れが2年半も前倒しになり、ほくそ笑むのは北朝鮮である。
ロシアのウクライナ侵攻からまもなく3年。中東の紛争も泥沼が続くなかで、つぎは日米韓の結束にもヒビが入るとなれば、まさに第三次世界大戦は空想の世界の出来事ではなくなってくる。
韓国大統領の逆ギレという誰も予測できなかったような事態はそんな危険までもはらんでいる。
(24/12/4)