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トイレが近い

トシをとると身体にガタがくるのはある程度仕方がない、と割り切りが必要だ。

血糖値が高いために薬を処方されておよそ20年が経つ。おかげさまで数値はまずまず安定していて、それ以外は問題がない。特に“痛い”“痒い”はないし、自主的な断酒は実施しているが、食事も制限なく楽しんでいる(本来ならば控えるべきであろう甘いモノもかなり食べちゃっている)。このトシまでQOL=生活の質を落とさずにキープできているのは、本当にありがたいことである。

しかし、数年前の人間ドックでPSAの値が悪化していることが判明した。前立腺がんの兆候を示すことがある指標だという。さっそく専門医に回されて定期的にMRI検査などを続けているが、いまのところ「前立腺の肥大は認められるが、がんではないだろう」というところ。

なるほど、前立腺肥大のためなのか近年はトイレが近くなった。

「いったいどれだけの頻度なのだろう」と思い立って、1日のおしっこの回数をスマホに記録している。普通に8〜9回だが、さすがに10回に達した日は「きょうは多いなー」と不安な気分に襲われる。就寝後も必ず未明に1回はトイレに起きるし、それが午前5時過ぎだったりすればもう二度寝は諦めざるを得ない。

幸いなことにいまはオフィスワークなので、トイレには自由に行くことができる。

報道カメラだったころの“張り込み取材”ではこうはいかなかった。何時間も張り込んでいながら、「肝心の瞬間はトイレにいました」では洒落にならない。なるべく水分を控えるようにしていたが、いま思えばあまり身体にいいことではなかったな。

自由にトイレに行けない職業はいっぱいある。

身近なところでは3時間もの生番組をかかえているアナウンサーが思い浮かぶところだ。番組のアンカー役というプレッシャーだけなく、このような身体的な負担も受け止めながら週に5日間、合計15時間を費やすのは超人的なことだ。もちろん番組にはさまざまなコーナーや長いVTRがあるので、トイレに行く時間くらいは捻出しているはずなのだが。

脚本家の三谷幸喜さんが前立腺がん手術の体験をつづった「ボクもたまにはがんになる」で、術後に紙おむつをしていたことが周囲の人間に気づかれるのではないかとの思いがストレスだったと告白している。また、長時間になることが懸念される株主総会では壇上に登る役員は紙おむつを着用することもあるらしい。

ゆめゆめ「たかがおしっこ」と侮ることはできない。
(22/3/22)

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