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「悪魔ちゃん」騒動

 戸籍の氏名に読み仮名を書く「改正戸籍法」がことし5月に施行されるという。このニュース、うっかり見落としていたなあ。「日本の戸籍には実は読み方が書かれていないから、勝手に呼んでいるだけ」というトリビアもこれで終焉である。

 あまりにも酷い「キラキラネーム」の排除が念頭にあるらしい。まあ確かに「黄熊」で「ぷー」とか、「光宙」で「ぴかちゅう」とか、センスが悪いだけでなく、文化の破壊である。


そして、アタリマエながら当人にとって名前はアイデンティティ。「王子様」という不思議な名前をつけられてしまって改名に奮闘した男性の話にはほろっとさせられたものだ。


 そういえば平成初期にはこんな“事件”があったことを思い出した。我が子に「悪魔」という名前をつけて一旦は役所に受理されたものの、のちに拒否をされた父親が、家庭裁判所に不服申し立てをしたもの。

 当時は独身で子どもの名付けが自分ごとではなかった私。「トンでもなくセンスが悪い命名だけど、それをいちいちお上が咎めだてるのはどうなのか」と思ったことであった。しかしその後どこかで「そうした名前の人物に接することになる周囲の人物の気づかい・迷惑を考えれば社会通念上ダメ」という論理を聞いて、なるほどと考え直した。

 報道によるとこのたびの法改正で法務省が出した「指針」は「▽差別的、卑わいなものや、▽反社会的で、明らかに名前としてふさわしくない読み方も認められないとしています。」らしい。「悪魔ちゃん問題」は読み方そのものが問題になったわけではないが(誰が読んでも「悪魔」は「あくま」だ)、「反社会的で明らかに名前としてふさわしくな」にあたるのだろうな。しかし「明らかに」をどう判定するのかはまだ議論の余地も出てきそうだ。

 結局父親は「亜駆(あく)」という名前を届け出たという続報を読んだ記憶がある。ネット記事によると、さらに両親が離婚して母親に引き取られたあとに改名が認められて、いまは違う名前になっているそうだ。その「かつての亜駆」さんもいまは31歳になっているはず。ことしの戸籍法改正のニュースをどこでどう受け止めているのかな。
(25/2/17)

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