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カバンの重さは体調のバロメーター

 記者やカメラマンとして取材現場を飛び回っている後輩記者たちは、驚くほど重いカバンを持ち歩いている。いちばんの“お荷物”はなんといってもパソコンとその周辺機器だろう。ご苦労なことである。こんなところでも「若くないと務まらないなあ」と思い知らされる。

 私が日本の現場にいた頃、パソコンはここまで小型軽量化していなかった。いちいち持ち歩く必要がなかったのは幸運なこと。各国へ出張することが多かった東南アジア支局当時はもちろんどの国へ行くにも携行したが、街角での置き引きが心配なほか、突然のスコールに見舞われる土地柄だ。屋外取材にはなるべく持ち出さず、取材拠点に置いていた。

 報道局から異動して事務系サラリーマンになったいま、打合せなどはあっても、終日オフィスの外に出ていることはめったにない。それなのに、「外にいるタイミングで何かあったら、いきなり遠方へ回されたら」という習い性だけは抜けないようで、各種アイテムをゴチャゴチャとカバンに入れておくのはやめられない。上司からは「お前、アホか?!」と呆れられる。

 最近は「なるほど、いまや会社を一歩出たら、もはや仕事が追いかけてくることはないんだな」ということをようやく実感できるようになった。少しずつカバンの中身を“置いておく”。「カバンが軽いことはこんなに楽チンなのか」と、足取りだけでなく心持ちまでが軽くなる。

 朝の出勤時に自宅で「よっこらしょ」とカバンを持ちあげると、日によって軽かったり、やけに重たく感じられたりする。体調、気力が関係しているようだ。本人が気づいていない蓄積疲労やストレスがあるのだろう。もういいトシなのだから、こうしたバロメーターをうまく使って、手を抜く時にはしっかり手抜き。これも大人の嗜みというものだろう。
(22/5/27)

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