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涙で精神を浄化する

 「トシを取ると涙もろくなる」と言われる。還暦を迎えたいま、それがぼんやりとわかるような気がしてきた。
 
 久しぶりにNHKの朝ドラをしっかりウォッチしている。笠木シヅ子をモデルにした大阪局制作の「ブギウギ」だ。主人公の幼少期を演じた子役(澤井梨丘さん)の健気さが印象的だったし、あとを承けた主役・趣里さんの表情や仕草などがなんとも愉快で愛くるしく、見ていて飽きない。
 
 ドラマなのでホロっとさせられる場面が定期的にやってくる。ストーリーを盛り上げるための演出であることは承知していても、いちいちグッとくるのだ。実際に涙を落とすことまではないものの、お腹のあたりにジワッと温かいものが発生して、それが鼻のあたりまでジュルっと立ち昇ってくるのが感じられる。それでも心が動かされていることが家族にバレるのが気恥ずかしいので、表情はあくまでもポーカーフェイスを崩さない。
 
 そして、それがなんとも気持ちがいいのだ。「カタルシス」=精神浄化作用ということだろう。実際に水分を落下させないのにその気分を味わえるのは、ちょっと嬉しい。
 
 こんなことは誰でも知っていること。ネットで検索すると「涙活」(るいかつと読むのか?)というワードもあるらしい。
 

 トシを取って怒りっぽくなったり涙もろくなったりするのは「脳の前頭葉の働きが衰えて感情に歯止めが効きにくくなるから」と説明されることもある。しかしこうして気分をスッキリさせてもらっていると、「これは健康のためにわざとそうなるように仕向けてもらっているのかもしれないな」などと考えている。
(23/11/2)

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