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科研費申請のポイント(はじめに)


はじめに

これから5つ程の記事は、科学研究費補助事業(以下、科研費)の基盤研究(C)と若手研究の申請書作成に役立つ情報をメインに書きました。その内容を利用する際には、ご自身の責任で行ってくださるよう、お願い申し上げます。

先月「科研費のワンポイント」として。1日1ポイントずつ、計30回X(旧twitter)にポストしていました。今回、それをまとめなおしたものを、noteに掲載したいと思います。今年の科研費も終盤の時期に差し掛かってきましたが、その際の見直し等にあたって、少しでもお役立て頂ければ幸いです。

読んでくださる方々におかれましては、まず御礼もうしあげたいと思います。この記事は、皆様の申請書作成の労力が、良い研究につながることを願って、またそのために少しでも役立つのなら、この程度のノウハウ提供はやすいもの、という気持ちで書きました。

「短所を消す」

基盤研究では現在評定要素が9つあります。そうすると、評価者がよほど意識しない限り、一つの評定要素は1/9の重みになります。例えば「研究の重要性」を評価で特に重視するといっても、仕組みの上で重みづけをしない限り、どうしても均されます。つまり、申請書上でそれだけをアピールしてもそれ程加点されません。それよりも、短所を作らず各評定要素を満遍なく取った方が良い、となります。
9つある評定要素について漏れなく記述し、それぞれの文章量や見た目のバランスを取る事が重要です。特に不採択が続いている方は、図表を用いたり、これからご紹介するテクニックなども利用して、まずバランスを取ってみてください。評価がかなり変わるはずです。
申請書上で単に短所をなくせば採択されるかといえばそうでもなく、科研費は研究者同士の競争であり、長所も必要だと思います。ただ短所を消しておかないと、アイデア・内容の勝負にたどり着けない、というのが私の印象です。

科研費の全体構造

これを科研費全体の構造と関連付けてみます。以下、人数としていますが、正しくは補助事業数です。科研費は、既に採択されている方とその年応募する方の合計が大雑把に14万人です。うち多くは若手・基盤Cです。
これをさらに概数で分けると、既採択が6万人、新規採択が2万人、新規不採択が6万人です。ただ現在の評価システムから考えると、新規採択のうちの1万人と、不採択の3万人(AB判定)は、評価者のうち1,2名の1,2点の違いしかありません
つまり毎年、その年に申請する8万人のうち、文句なく採択1万人、文句なく不採択3万人、その間の4万人の中で1万人(件)の採択を競争しているようなものなのです。全体でみても、競争している部分だけをみても、1/4と採択割合は同じですが、競争している部分の評点の幅はとても狭く、ちょっとした違いや運等も採択に関わって来るでしょう。
現状では(また特に若手・基盤Cであれば)、短所をきちんと消せば、実質的な競争をしている4万人の中に入ると思います。その上で、良い研究アイデアをアピールするのが、採択への近道だと思います。

なお蛇足ですが、競争している4万(人・件)を減らす方法も評点の幅を広げる方法も色々あるため、科研費の現状は制度側で意図的に為されていることだと思います。ただ個人的には、一番厚い層のところで採否を決めるのは、評価コストがかかりすぎだと感じます。多数のほとんど同じ評価の中で優劣をつけることは、評価者の負担が大きく、また心理的にもつらいはずです。科研費の申請書の作成、そしてそれをチェックするものも、評価者には常に敬意をもちたいものです。

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