「アジャイル家族」のはじめ方
わが家は夫婦共通の認識として、かなり深い信頼関係で結ばれていると自負しています。何ならそれぞれの実親より、お互いのことを信頼してると思う。
つい先日(12月6日)に結婚6周年を迎え、現在7年目。
結婚当初から仲はそれなりに良かったけど(そうじゃなきゃ結婚までしないか笑)、ここまでの信頼関係を築けたのは、2017年に私が第二の育休に入った約1年間のこと。
その1年間の間に、私たちは「アジャイル家族」になったから、信頼関係が築けたと思っています。
私たち夫婦がやったことは、とってもシンプル。
タスク見える化と、毎日のデイリースクラム(対話)だけ。
あっ、「アジャイル家族」の「アジャイル」というのは「アジャイル開発」のことです。
夫婦間のコミュニケーションや、信頼関係の築き方に興味がある方へ。
わが家がアジャイル開発を取り入れることになった経緯から、順を追ってお話させてください。
目次
1.アジャイル開発とは何か?
2.家族にアジャイル開発を取り入れることになった経緯
3.具体的な進め方
4.アジャイル開発を家庭に取り入れた効果
1.アジャイル開発とは何か?
ソフトウェアを開発する手法として、日本で広く知られているのは「ウォーターフォール開発」です。仕様を決め、設計・開発と具体的な作業工程を、水が上流から下流へ流れるように(ウォーター フォール)、スケジュール通り遂行させ、完了させます。 仕様通りにリリースするという「プロジェクトの終了」に向けて管理し、開発していく方法です。
一方、アジャイル開発は、スピーディーにプロトタイプを作り、顧客に提示し、その反応や要望を 元に修正して、徐々に完成へ持っていく方法です。
アジャイル開発は「プロダクトが継続」していくこと=顧客に価値を提供し続け、プロダクトが存在し続けることを目指していきます。
市場や技術の変化が激しく、不確実性の高い昨今、最小限のサービス(MVP)を作り修正していく アジャイル開発が注目されつつあります。
2.家族にアジャイル開発を取り入れることになった経緯
私が第二子の育休に入った時(2017年春)、家事・育児・各種手続き・家の片付け等、家庭内の問題やタスクに追われ、夫とコミュニケーション不足で喧嘩をしてしまうことが増えました。
夫は2016年からスタートアップ企業へ転職し、エンジニアとしてサービス開発をしていたため、 家庭内にもアジャイル開発を取り入れよう、と提案してくれて、始めることになりました。
私はザ・文系のワーママなので、夫がエンジニアじゃなかったら「アジャイル」なんて出会うこともなかったですが・・・
「なんか面白そう、やってみよう!」ということで、始めることにしました。
3.具体的な進め方
①問題とタスクの視覚化
まず、家庭内の問題とタスクを視覚化するため、「タスクカンバン」方式を取り入れました。
「issue」に今感じている問題を一つずつ付箋に書き出し、壁に貼り付けます。「issue」の具体的な解決方法をタスクとして分解していき、それぞれ付箋に書いていきます。
そして、作成したタスクは、一つ一つに「何時間かかるか」を「プランニングポーカー」で見積もりしていきます。
■タスクカンバンのイメージ
※プランニングポーカーとは、「1,2,3,5,8,13...」と数字の入ったカード(トランプで代用可)を各々 が持ち、ゲーム感覚でタスク見積りの合意形成を図る方法です。
例えば、上記のタスクカンバンで言うと「床にあるモノの断捨離」について、それぞれが何時間 かかるのかをカードで出し合います。ギャップがあった場合には、それぞれがなぜその時間がか かると考えたのかを伝え合い、納得のいく見積もり時間を弾き出します。 (私たちは1~2ヶ月程経った頃にお互いのタスクを見積もるギャップがほとんどなくなったので、 プランニングポーカーは行わなくなりました。)
②タスクは1週間単位で決定
見積もり時間の記載された付箋を見比べ、1週間の間に完了できそうなタスクを絞り込みます。この1週間という単位を「スプリント」と呼び、実際に何時間分のタスクが完了できたかを、毎週測っていきます。(これを「スプリントレビュー」と呼びます。)
今週中に完了できそうな時間数に見合ったタスクを「to do」に並べます。それぞれのタスクが夫婦どちらの担当か、わかりやすく(イニシャル等)も記載します。
実際に着手したものは「doing」、完了したものは「done」へ移動していきます。
大切なポイントは、全ての「to do」を1週間のうちに無理して終わらせる必要は無いということです。
1週間後のスプリントレビューでは、「done」に何時間分のタスクを完了できたのかをレビュー します。毎週の完了度合いを記録し、直近1か月分(スプリント4回分)の平均値を計ります。こ を「ヴェロシティー」と呼びます。
たくさんタスクが完了する週もあれば、なかなか進まない週もありますが、ヴェロシティーのばらつきは段々と落ち着いていきます。 無理のない範囲で完了したタスクのヴェロシティーを計ることで、チームの「継続可能な」生産 性を正確に捉えることができます。
スプリントレビューをした後は、再び翌週のタスクを「to do」に移します。時間数は、ヴェロシ ティーを見ながら、無理のないように進めていきます。
③毎日5分間の「デイリースクラム」を行う
ラグビーで、選手が肩を組んで「スクラム」を組む場面を見たことがあるかと思います。 そのイメージで、アジャイル開発では、「スクラム」というコミュニケーションをチームで積極的 に行っていきます。
デイリースクラムでは、今週のタスクに取り組む中で生じた新たな問題や、予定よりもタスクの処理に時間がかかっていることなどを、包み隠さず正直に話していきます。 場合によっては、分担を変えたり、タスクの中身自体を見直したりしていきます。
④継続したい取り組みは、「kpt」で管理する
前述の①〜③までは、対応が完了したら終わりになるタスク管理です。
その他に、「継続して取り組みたい課題」、「習慣にしたい取り組み」があった場合には、「kpt」 で管理します。(「kept」「problem」「try」の頭文字を取っています。)
例えば、夫が「運動不足」という問題(=problem)で悩んでいたとします。その解決策として、試してみたい方法を「try」してみます。継続が難しければ「try」を見直し、上手く習慣化できそう な場合は「kpt」に移します。これも視覚化していることで、継続がしやすくなる仕組みです。
■「kpt」のイメージ
4.アジャイル開発を家庭に取り入れた効果
まず、タスクカンバンで家族のタスクが視覚化できたことで、私の精神状態が安定しました。
理由は二つあり、「頭の中にあったタスクが整理されたから」、「タスクを完了した達成感が味わえるようになったから」です。
また、夫婦間のコミュニケーションも活発化し、信頼関係も深まりました。 今では、お互いがお互いの安全基地として、どんなことがあっても受け入れてくれる安心感を感じています。これが、何より大きな収穫です。
なぜこの成果が得られたかというと、そもそもアジャイル開発をチームで進めるには、大前提として「チームメンバー内で心理的安全性が担保されていること」、「セルフマスタリ・チームマス タリが得られていること」などが必要になるからです。
これを家庭に置き換えると、どんなことが起きてもお互いに受け入れられる安心感や、個人の人生の目標・家族としての目標を理解しあっているという土台が必要になってくるのです。
私たちが取り組んだのは「家族の問題・タスクを視覚化する」ことでしたが、実際にスプリントレビューやスクラムを通して対話をする中で、お互いの問題意識の背景にある価値観にも触れることになります。
そこで、対話を円滑に進めるために「メンタリング」という手法を取り入れたことにより、情報 の非対称性を解消し、問題を明晰化し、お互いの心理的安全性を築いていくことができました。 対話を重ねたことにより、夫婦間の信頼関係が強固になっていったのだと思います。
最後になりますが、私たちがアジャイル開発を家庭に取り入れる中で、参考になった著書をご紹介いたします。「エンジニアリング組織論への招待(広木大地 著)」です。著者の方に夫が仕事で お世話になり、本に書かれているエッセンスを著者ご本人から夫が伺っていたことも、とても大きな恩恵となり、大変感謝をしております。
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