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Y染色体ハプログループ・語族・人種第6章『I系統・J系統 西ユーラシアの原住者』
Y染色体ハプログループは男系遺伝子でY染色体にあるので男性にしかなく男性に受け継がれる遺伝子です。
場合にもよりけりですが言語系統、つまり語族の分布とある程度の一致が見られるため合わせて語ります。
ハプログループI
ハプログループI(M170)はFから派生し、現在ではパラグループがイランから数例発見されているIJの一派でJとは姉妹系統で、4.3万年前に誕生、今ではヨーロッパに多く分布する主要系統となっています。
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IはC1a2とK2aより後の3〜2万年前頃にヨーロッパに到達した狩猟最終民に由来することがわかっていて、後にGを持つ人々の農業文明を受容、その後にRを持つインド・ヨーロッパ系民族に飲み込まれました。
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I1
原始的なパラグループのI*はコーカサスやトルコに低頻度で見られ、他にもヨーロッパ各地やアフガンのハザーラでも確認されていて、I1(M253)は石器時代には少数派でそこから拡大して創始者効果を起こしたようです。
現在のI1は北欧起源の「ゲルマン系民族」、そしてその典型とされていた金髪碧眼、高身長といったかつての人種学の分類でいう「北方人種」の特徴の分布と関連しています。
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ゲルマンの起源の北欧諸国では3〜4割ほど、ゲルマン人が分布しているかしていたイギリスやドイツ、フランス、ロシアなどでも1割以上見られますが、早くに分岐したI1の子系統の多くは北欧よりも割合の少ない南欧側に分布しています。
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I2
Iのもう一つの形であるI2(M43)(旧I1b)はヨーロッパ全土で見られますが現在ではスラブ人のバルカン半島移住で創始者効果が発生した結果、バルカン半島西部のディナル・アルプスに非常に高頻度になっています。
また、I2aは西ヨーロッパ狩猟最終民(WHG)という先史時代集団で一番よくあるタイプで、現在、I2a1a(P37.2)の系統ではI-L158(あるいはI-M26)はサルデーニャ島で4割を占めます。
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I-L621系統は先述したバルカン南西のスラブ人であるクロアチア、ボスニア、セルビアなどの中で高頻度であり、この地域の人々は平均180cm以上と背が高く短頭であるなどなんとなくの傾向があり、かつての人種学で「ディナール人種」と名付けられていました。
L621はスラブ系の起源の地である東欧、特にウクライナ、ベラルーシ、ポーランド南東部で比較的多く見られ、ディナール人種間での高割合は中世にポーランド南東部から一部が移住した結果であることがわかっています。
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I-M223はドイツとスウェーデン南東にやや集中しているものの東欧、西欧、北欧までやや低い頻度で広く見られ、また、これは歴史的な話ですが中欧・西欧のケルト人が移住していたトルコのガラティアとビテュニアではI1とこのM223が低頻度で見られます。
ハプログループJ
ハプログループJ(M304)はFから派生したIJの一派でIとは姉妹系統で、4.3万年前に中東で誕生したと思われ、現在では北アフリカ、東アフリカ、ヨーロッパ、中央アジア、南アジア、東アジアにまで広まっていて、パラグループのJ*はイエメン領ソコトラ島の島民(Soqotri)のみに多く、他では殆ど存在していません。
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J1
J1(M267)はアラビア半島や北アフリカ諸国などアラブ人が中世のイスラム拡大時に広まった地域で7〜3割ほども見られ、アフリカでは他に中東人と現地人の混血民Lembaで4割、アラブ人と同じくセム系のエチオピアのアムハラ人、ベルベル系民族でも3割ほど見られる場合があります。
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また、イランやインドのシーア派ムスリム、クシ系のソマリ人などでも1割ほど見られ、北東コーカサス語族系のダルギン、アヴァールなどで過半数を占めます。
J2
J2(M172)は恐らくアナトリアやコーカサスに起源をもつタイプで、現在でも北東コーカサスのイングーシ人で9割、それと非常に近い民族であるチェチェン人で6割、北西コーカサスのアブハズやチェルケスで2割以上、南コーカサスのグルジアで2〜7割、アゼルバイジャンで2~5割、アルメニアやオセチアで2割ほどとコーカサス全体で多く見られます。
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また、西アジアにも拡大してアラブ化に乗り、ヨーロッパへの農業拡大と共にそちらにも輸入され結果、トルコで2~4割、レバント全体で3割程度、イランで2割、南欧のギリシャで1~5割、イタリアで1~4割、中央アジアでウズベクで3割ほどと広く見られています。