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「クソテック」 -糞が紡ぐ巨大グローバル&宇宙ビジネス(The Futurist 2/1/19)


「クソテック」と「糞尿経済」を紹介します(お食事中の方は失礼いたします)。

The Futurologistは、数十年後を見据えるアントレプレナーや科学者に届けるマガジンです。未来を予測する学問「未来学(futurology)」、グローバル課題、未来技術に関する最新情報をサクッと提供します。だって世界は、貴方の未来設計にかかってるから。


「クソテック」と「糞尿経済」


今、ある原材料の数兆円に登る経済的価値が注目を集めている。

それは金でもグラフェンでもない。

糞尿である。

嘘クサく聞こえるかもしれないが、大昔から糞尿は農作物の肥料として活用されてきた。

そして今、先端技術によって、糞尿の新たな活用方法が模索されている。

特にその可能性は、発展途上国において重要な意味をもつ。

一つは、エネルギー資源としての糞尿の可能性だ。

糞尿を嫌気発酵させ、回収したメタンガスをエネルギー源として発電させれば、再生可能エネルギーが出来上がる。

糞尿エネルギー市場は、2013年から2020年にかけて年間6%成長を遂げ、4兆円規模に成長するという。

エネルギーを回収できるのは、人間や牛の糞尿からだけではない。

(Image Credit: Océane Izard)

例えばデザイナーのOcéane Izard氏は、犬の糞を電力に変えるコンセプトを設計した。

中型犬のビーグル一匹が一日に排出する250~340程度の糞を使えば、換気扇を二時間回せるという。

これは、エネルギー問題だけでなく、各都市の観光や衛生、環境にも好影響を与える。

パリでは毎年12トンの犬のフンが路上に放置されており、観光都市にとっては非常に大きな問題である。

アメリカでは年に1,000万トンの糞がゴミ埋立地にたどり着くが、これはメタンガスを発生し、地球温暖化に貢献する。

シアトルの飲料水に含まれるバクテリアの20%は犬の糞尿から来るというから、もしこのコンセプトが実現すればそのインパクトは大きい。

医療現場でも糞尿が活用されている。

クロストリジウム・ディフィシルと呼ばれる腸炎は、一日15回以上もの下痢を起こす極めて恐ろしいバクテリア由来の病気である。

抗生物質が腸内の菌の生態系を壊した時に発生するこの腸炎だが、便微生物移植(健常者の糞尿を浣腸を用いて移植する)技術を使えば、90%の確率で治癒するという。

先進国アメリカでも10万人以上がこの病気に苦しんでおり、途上国固有の問題ではない。

便微生物移植は、今後10年で1,000億円市場にまで膨らむと見込まれる。

さらに、糞はおおよそ75%の水分から成り立つことから、糞尿から飲料水を製造する取り組みも存在する。

ビルゲイツが飲料水を作った水を飲んで話題になったことを覚えている人も多いだろう。

少し未来の話になるが、糞尿は、宇宙においても活用が期待されている。

アメリカのClemson Universityの科学者が取り組むのは、糞尿から取り出した窒素を遺伝子組み換えイースト菌に与えて、そこからプラスチックやサプリメントを作る研究だ。

クローズドループの中での実現課題は複数存在するが、もし可能になれば人類のマルチプラネタリー化に大きく貢献するだろう。

このように、糞尿の可能性は、グローバルだけでなく、宇宙規模にまで及ぶ。

「クソテック」は、小便臭くも胡散臭くもない、れっきとしたイノベーションだ。


今日の一枚

(Image Credit: change:WATER)

これはただのトイレじゃない。

ご覧の通り、排水系統が存在しないのである。

change:WATER Labsによって作られたこの装置は、糞尿を気化させる能力を備える。

水道インフラの整わない地域でも、安全に排泄物の処理が可能になり、衛生問題の解決に大きく解消するのだ。

価格はおおよそ3~4万円を想定しており、トイレへのアクセスを持たない26億人の生活を大きく変えるポテンシャルを持つ。


筆者


空飛ぶ車や培養肉事業を前線で率いてました。今は独立して企業のオープンイノベーションや新規事業開発支援、データ解析のご依頼を承っております。頂いたお金は異端な科学者とのシチズンサイエンスプロジェクトに活用します 。 主に未来学/科学/スタートアップ/イノベーション等について呟きます。


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