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第9回 なぜ写真館だったのか?(その2・もし自分がお客なら)

前回、写真館を作った理由として「下請けではなく直接お客様と繋がりたい」というBtoBとBtoCの事業形態のお話をしました。
そして私が写真館をしようと思ったもう一つの理由。それは『自分が行きたいと思う写真館が周りになかったから』です。

当時作ることが決まったスタジオスペースで、どんな写真サービスを始めようかと考えていた時に『子供がいて、七五三や家族写真を残しておこうと考えた時の自分』を想像してみました。
「チェーンの子供写真館ねぇ……自分の子供にはキャラクター服は着させたくないなぁ」
「老舗写真館は……そもそも入りにくいし、なんだか否応なしに奥さんの肩に手をかけさせられそう」「じゃあ他は……近くには思いつかん!」と考えた時に

『自分と同じ思いを持っている人がこの地域にもきっといるはず』

そう確信しました。
そもそもビジネスというものはそのサービスを利用する人がいなければ成り立ちません。学校の授業で習った「需要」ってやつです。そしてその誰かの欲求を満たしたり悩みを解消する行為、つまり「供給」をすることで報酬としてお金が発生します。
その悩みを持っている人間として自分自身がいたということは、最低一人はサービスを利用する可能性があります。あとはその需要が・どのくらいの規模であるか・どのくらいの価格で利用してもらえるかそこを考えて、実際に・自社のサービスを利用する人数 × 単価 ≧ 運営するのに必要な経費であれば生業として成立できる可能性があります。
料金設定や経費についてはまた別の機会に書くとして、需要規模についてはもちろん多少は調べたものの、この時は具体的な数字などの客観的根拠に基づいてではなく、その業界で仕事をしてきた経験的根拠で十分存在すると判断しました。
さらに自分の商圏の現存する需要を競合と取り合うのではなく、私がイメージしたような「撮影をしたいが感覚にマッチする写真館がないため利用していない層」に対してサービスを提供することで、他店との競争を最小限に抑えると同時に、地域の撮影需要の分母を増やすことも可能だと考えました。
もし自分の知らない分野で事業を起こそうとするならば、そんなに早く判断できなかったかもしれませんが、そこはその地域でその業界にいた強みと言えるでしょう。

このように「自分が客だったら買うか?(利用するか?)」「いくらなら出すか?」その質問をきっかけに商品やサービスを考える方法は非常にやりやすいと思います。
ただし、そのためには自分の感覚や欲求がマジョリティ(多数派)なのかマイノリティ(少数派)なのかなど、自分という消費者を客観的に見分けられないと規模の想定がかなり狂ってきてしまうので注意が必要です。(私は自分をマイノリティ寄りのマジョリティだと思ってますw)

ちなみに客観的根拠の薄い事業計画は外部ではあまり通用しないので、あくまで内部のアイディア段階で用いるのがベターでしょう。また需要規模があっても、前述の価格だけでなく供給のタイミングやコミュニケーション方法、ライバル、代替商品の存在、認知状況など様々な要因によってビジネスのバランスは成り立っており非常にややこしいので、そこはまた一つ一つ。

次回は写真館だった理由その3、「写真館」という言葉について書きたいと思っています。

(あとがき)
「今の自分のお店は、自分が客でも行きたいと思うお店になっているのだろうか?」このブログを書きながらそんなことを考えてみました。
幸せなことに、答えは「イエス」です。それどころか想像した以上のお店が出来ていると思っています。それはうちのスタッフのおかげでもあります。でも未来はわかりません。
自分(達)が行きたいと思うお店や仕事をし続けるために、いつもその問いかけを大事にしたいなと思いました。

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笠原徹|地方でクリエイティブな仕事をする|ハレノヒ
株式会社ハレノヒ代表取締役/2015年、築100年の古民家をリノベーションした写真館をオープン。地方写真館の再定義を行うことによって人とまちが豊かになる仕組みをつくろうとしています。その他セミナー講師や各種メディアにも出ています。