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【オリックスバファローズ、祝日本一】後位追走再び、東京ヤクルトをも差す

2022年、パ・リーグ連覇を果たし、CSを勝ち進んだオリックスを待ち受けていたのは前年ほっともっとフィールド神戸の空に舞うことを許した高津監督率いる燕軍団・東京ヤクルトスワローズでした。日本一を決められた借りを返す願ってもないビッグチャンスが1年の時を経て訪れました。さぁ行こう、今年こそ叶うべき夢の先へ――。

【戦前の予感】敵地球場の慣れ、阪神と似たチームと戦う点ではヤクルト有利か

オリックスは少ない得点を強力な投手陣で守り切る野球を、ヤクルトは多少失点しても火力のある打線で打ち勝つ野球をする印象でした。どちらもホーム球場の広狭を考えた野球と言えますね。しかしながら、戦前からオリックスには懸念材料が2点ありました。

1つ目は、ヤクルトがCSファイナルでオリックスと同じタイプの野球をする阪神を撃破していたことです。もう1つは、オリックスのホーム球場・京セラドーム大阪で、毎年リーグ戦において対阪神戦や対巨人戦を戦っていて球場慣れしていたことです。オリックスが明治神宮野球場でプレーするのは日本シリーズでぶつからない限り交流戦の2年に一度と限られているので、何となく嫌な予感がしていました。

【前半4戦】図らずの後追いポジション

第1戦はエース・山本由伸投手で臨みましたが、慣れない明治神宮野球場のマウンドでの制球に苦しんだようでした。初回先頭の塩見選手に初球の真っすぐをレフトへ打ち返されてしまいます。二死一二塁となった後、オスナ選手に三塁ベースをかする運のない打球で失点をし、出鼻をくじかれました。

テレビではライト側からの映像しか流れていなかったためファウルにしか見えませんでした。後日、一塁側のカメラ席からの映像をyoutubeで確認すると不自然に打球方向が変わっていたので三塁ベースに当たってフェアになったのだと知りました。この時点で、運はヤクルトに味方していることが分かりました。

2回に同点に追いついたのはいいものの、敵地での同点止まりは五分五分とは言えません。予想通り、3回と4回にソロHRを続けて被弾したことでヤクルトに主導権を奪われ、5回には負傷で山本投手が緊急降板する最悪の流れになりました。打線もチャンスは作れどホームが遠く、結局この試合は3-5で敗戦します。1敗した上に、エース不在のまま今後日本シリーズを戦わなければならない精神的なダメージをも負ってしまいました。

悪い流れは簡単には止まらず、第2戦も3点をリードしながら9回裏に阿部投手が内山選手に同点3ランHRを被弾し、そのまま引き分けで終わります。ヤクルトからすると、この試合は敗色濃厚の状況から追いついたので勝ちに等しい引き分けと言えるかもしれません。でも、自分の見方は少し違いました。前日の勝利の勢いがありながらホーム球場でこの第2戦を取れなかったことは、”勝てる試合を勝ちきれなかった” と言うべきではないかと。これでヤクルトへの流れは一旦途切れたように感じられました。

舞台を京セラドーム大阪に移しての第3戦、5回表に宮城投手が山田選手に先制3ランを被弾し、流れはまたヤクルト側へと傾きました。1-7での敗戦となり、これで対戦成績は2敗1分。これまでの3戦の内容からして「ヤクルトがこのまま2年連続の日本一になるんじゃないか」と世間の声が聞こえ始めてきました。

これに対して、自分はこう思っていました。「レギュラーシーズンとCSファイナルでソフトバンクとの痺れる戦いをくぐり抜けたこのチームがこのまま静かに終わるはずがない。必ず一度はチャンスが来る。けれど、それを逃したらヤクルトは許してはくれないだろうな」と。そして機を見計らったかのように、レギュラーシーズンでソフトバンクを追い詰めたオリックスの後位追走が再び始まったのです。

第4戦の1-0で迎えた5回表、先発山岡投手が一死から塩見選手にあわやHRとなるフェンス直撃の三塁打で一打同点のピンチを招きます。70球を超えたあたりで制球が不安定になるタイミングを知る中嶋監督はすぐさま継投に入り、宇田川投手山﨑颯投手ワゲスパック投手のUSJリレーで虎の子の1点を守り切り、星を1つ返すことに成功しました。はたから見ればただの1勝で、まだ負け越している状態に映ったでしょう。でも、初めてオリックスの野球で勝利できたことで十中八九潮目が変わるだろうと自分は直感しました。

【後半3戦】後追いからの直線一気、”日本一”のゴール先着

残りの3戦に関しては、オリックスの鉄壁中継ぎ陣が一度掴んだ流れを手放さなかったことと、ヤクルトの勝敗に直結する致命的なエラーが目立ちました。京セラドーム大阪最終戦となる第5戦はマクガフ投手の悪送球によって同点に追いつき、吉田正選手が5階席へ叩き込む特大のサヨナラ2ランHRで勝利を決めました。これで対戦成績を五分とし、完全にオリックスが追い抜く態勢に入りました。

振り返ってみますと、この試合は第2戦のヤクルトと似た状況でした。”たられば” ではありますけれど、同点で終わらせることなくサヨナラ勝ちしていればヤクルトはその勢いのままに日本一に輝いていたと思います。そういう意味では、第2戦のオリックスは追いつかれたショックはあれども負けなかったことが何よりも大きく、日本シリーズを大局的に見れば ”勝ちに等しい引き分け” だったと言えるのです。

さて、舞台を再び明治神宮野球場に戻した第6戦・第7戦でも連勝の勢いのままにオリックスの野球を敵地で見せつけました。USJリレーに平野投手、比嘉投手、阿部投手、近藤投手など鉄壁の中継ぎ陣を織り交ぜ、強力ヤクルト打線に失点はしても最後まで同点に追いつくことを許しませんでした。後追いポジションとなり、先行逃げ切りを図る東京ヤクルトを相手に怒涛の4連勝、直線一気の差し切りで ”日本一” のゴールに見事オリックスが先着したのでした。

オリックスとしては26年ぶり5度目、バファローズは初の日本一になることができました。2021年は2勝4敗でほっともっとフィールド神戸で高津監督の胴上げを許しました。2022年はオリックスが4勝2敗1分で明治神宮野球場で中嶋監督の胴上げをし、前年の借りをきっちりと返しました。2年間の日本シリーズのトータルの戦績が五分であるように、両チームの力は拮抗していて、毎試合白熱した(見ていて物凄く疲れる)面白い野球を見せてくれました。

オフには選手やコーチなどが入れ替わり、球界の勢力図がガラリと変わってしまうかもしれません。仮に、また暗黒時代に突入したとしてもオリックス(と阪神)の試合は見続けると思います。今から来シーズンが楽しみですね。

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はる筆線屋
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